2023年1月12日木曜日

第5回そらまどアカデミア「絵の具の旅— 中世ヨーロッパの絵の具の歴史とその作り方 —」

みなさん、新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今年はポンカンが不作で少ししょげているのですが、気を取り直してできることに取り組んで行こうと思います。

【参考記事】ミカンナガタマムシのせいでポンカンが壊滅…! やはり無農薬栽培は難しい。
http://nansatz-kurashi.blogspot.com/2022/11/blog-post.html

というわけで、2月5日(日)に第5回 そらまどアカデミアを開催します!

今回は、現代テンペラ画家のきはらごうさん(冒頭画像)をお招きして、「絵の具の旅—中世ヨーロッパの絵の具の歴史とその作り方—」という演題で話していただきます。

私はこの演題をいただいた時、「画家が絵について語るのはよくあるけど、絵の具について語る人は珍しいな!」と思いました。そして「現代テンペラ画家」という肩書きもなじみのないものだったので、「どうしてこの人はテンペラ画家になったんだろう?」と興味が湧きました。というわけで、先日、きはらごうさんのアトリエにお邪魔して話をきいてきました。

まず、なぜ「絵の具」をテーマにしたか。きはらさんはいろいろ語ってくれましたが、私が感じたことは、「この人は絵の具が好きなんだな〜」ということです。きはらさんは「テンペラ」という技法で絵を描いています。これは、ごく簡単に言うと「顔料を卵の黄身で溶いて絵を描く方法」です。『ヴィーナスの誕生』のボッティチェリなんかがテンペラ画家。

ここで、なんで「卵の黄身」が必要なの? と思うかも知れませんね。これは、顔料だけでは固着が十分でないので、卵のタンパク質が変性する力を借りて顔料を定着させているのです。ということで、テンペラで絵を描くには、いちいち卵を割って顔料を溶き、自分で絵の具をつくらないといけない。こりゃめんどくさい。しかも卵の固着力はあまりないので絵の具の厚塗りができない。というわけでもっと便利な油絵の具が開発されていきます。

しかしきはらさんは、この使いづらく、面倒なテンペラの技法がかえって楽しくなっちゃったそうです。元々は大学時代に、日本にテンペラ技法を本格的に紹介した田口安男さんからテンペラ画を学んだことに遡ります。それからしばらくテンペラからは遠ざかっていたそうですが、表現を模索する中で28歳頃に再びテンペラに取り組みました。するとこれが、「ぜんぜんうまくいかなかった」。そして「うまくいかないのに楽しかった」。というか「うまくいかないからこそ楽しかったのかもしれない」と、きはらさん。

話を聞いていたら、きはらさんは「試行錯誤の余地がある」ことが楽しいというタイプなのかもしれないと思いました。たぶん、料理をレシピ通りにつくらない人かも(笑)

そしてきはらさんは「現代テンペラ画家」を名乗るようになります。ただの「テンペラ画家」ではなく、「現代」を付けたのは、昔のテンペラ技法をそのまま使って昔風の絵を描くのではなくて、あくまで自分なりの表現をしたいという決意の表れだそうです。ちなみにこの「現代テンペラ画家」を肩書きにしているのは、今のところ日本でもきはらさん一人だけだとか。なじみがないはずです(笑)

それでは、きはらさんがテンペラを使ってどのような表現をするようになったか……については、当日、会場に作品を持ってきて下さるそうなので、そちらでご確認下さい。

ただ、ご自身で「ぼくの絵画は工芸的な部分がある」とおっしゃるとおり、普通の油絵とは全然違う質感が印象的でした。

これは、きはらさんがまだ大学時代にテンペラで描いた自画像の一部分なのですが、これだけ見ても油絵とは全然違うことがわかると思います。

講演では、中世を中心にしつつも古代から現代までの絵の具の歴史をひもとき、実際のテンペラ絵の具の作り方まで語って下さるそうです。絵を描かれる方はもちろん、西洋美術に関心がある方に広く聴いていただきたい講演ですよ。どうぞよろしくお願いします!

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第5回 そらまどアカデミア

絵の具の旅— 中世ヨーロッパの絵の具の歴史とその作り方 —

講 師:きはらごう(現代テンペラ画家)

絵の具の歴史や作り方について考えたことありますか。古代から使用される絵の具は中世ヨーロッパで大きく発展し、現在の絵の具となりました。様々な時代の作品を例にしながら、絵の具の歴史や作り方まで、マニアックな内容を分かりやすく解説し、絵の具の魅力を探ってみたいと思います。

日 時:2023年2月5日(日)14:00〜15:30(開場13:00)
場 所:books & cafe そらまど (駐車場あり)
料 金:1000円(ドリンクつき) ※中学生以下無料
定 員:15名
要申込申込フォームより、または店頭で直接お申し込みください。※中学生以下は無料ですが申込は必要です。
問合せこちらのフォームよりお願いします。

<講師紹介>
鹿児島市在住1975年生。合同会社GoART代表。九産大大学院芸術研究科修了後、フランスパリに3年間美術留学。帰国後、高校美術教師として18年間在職し専業画家として独立。全国で個展を開催しながら絵画教室の講師をしている。