2023年2月12日日曜日

【お客様の声】甘夏ぽい見た目とは裏腹にさわやかな甘さで、一番のお気に入りになりました。

「スイートスプリング」って聞いたことありますか?

あまり都会では出回っていないカンキツなので知らない人が多いかもしれません。

これは見た目は八朔ですが、八朔のような苦みはなく、つぶつぶ感(サクサク感)はなくてジューシー、糖度はあまり高くありませんが酸味も低くて爽やかな味がするカンキツです。

八朔同様、皮は固いので手では剥けません。 櫛形に切って食べるのがオススメです。

スイートスプリングの著しい特徴は、酸味が低くなる時期が他のカンキツに比べてとても早いこと。11月、まだ果実が青い時期に、酸味が低くなって食べ頃を迎えます。そのため、南さつま市の物産館では11月中旬頃から売られています。この時期は他のカンキツはないので、スイートスプリングの独擅場ですね!

(名前にスプリング=春が入っているのに、真冬になる前から売られるようになったのがネーミングって難しいなと思います。)

今、ネットで検索してみたら「栽培が難しく生産量が少ない」というような記述がありましたがこれは間違い。スイートスプリングはカンキツ類としては栽培は容易な方に属します。害虫の被害を受けにくく、病気に強いので無農薬栽培にも向いていると思います。

ただし、まだ生産量が少ないので栽培のノウハウは蓄積されていません。具体的には生産量を上げること、糖度を高めることの2点が、私としてもまだよくわかっていません。私は他のカンキツを基本的には無肥料で育てていますが、これに関しては少し肥料があった方がいいのではと考えています。しかし無肥料でも生育は旺盛だし…、よくわかりません。

なお11月から売っていますが、私はやはり完熟した方が美味しいんじゃないか、という考えから1月中旬に収穫しています。ただし、これも「青いうちの方が美味い」という人もいます。まだ収穫時期も確立していないですね。

今年は、「南薩の田舎暮らし」の主要カンキツであるポンカンが不作だったので、ポンカンの代わりにスイートスプリングをFacebook等で案内しました。すると「スイートスプリングは初めてだけど注文してみます!」という親切な方がたくさんいらっしゃいました。そして、とても気に入って下さった方がいるのでいただいたメッセージを紹介します。

スイートスプリングがとっても美味しくて、大好きです!(東京都 Hさん)
前回注文したスイートスプリング、初めて食しましたが甘夏ぽい見た目とは裏腹にさわやかな甘さで、一番のお気に入りになりました。美味しかったです。
珍しい品種の栽培&販売、有難うございました。(千葉県 Kさん)

気に入っていただけて私もホッと一安心でした。ちなみに、私自身はスイートスプリングは酸味が低いのが物足りなく思っています。私は酸っぱいカンキツが好きです(笑)もう少し酸っぱいともっと美味しくなるような気がするんですが。

あとほんの数箱だけですが在庫がまだありますので、よかったらお試し下さい。

【南薩の田舎暮らし】無農薬・無化学肥料のスイートスプリング
※4.5kg入り1,900円で、スイートスプリングとしてはかなり安いです。でもあまり安くしすぎたので今後値上げするかもしれません。

 

2023年2月7日火曜日

第5回そらまどアカデミア開催しました! 絵の具の性質から見る絵画の歴史

2月5日(日)、第5回そらまどアカデミアを開催いたしました。

内容に触れる前に、まずはこちらの駐車場の案内についての不手際を謝りたいと思います。店舗駐車場だけでは足りないので、近くの久保公民館の駐車場も使うようになっていたところではありますが、そちらの駐車場もいっぱいになり、駐車に手間取られたと思います。申し訳ありませんでした。

とはいえ、今後も駐車場の誘導の人員を手配することができないのでご迷惑をおかけすると思います。ご寛恕いただければと思います。

それから、プロジェクタを映すスクリーンが空調の風でユラユラ揺れてたのも良くなかったですね! 見づらいまではなかったですが、気になった方は多いかと。申し訳ありませんでした(しかしこれも空調がないと寒いし…悩ましいです)。

さて、今回のテーマは「絵の具の旅—中世ヨーロッパの絵の具の歴史とその作り方—」ということで、西洋の絵の具の歴史を「現代テンペラ画家」のきはらごうさんに語っていただきました。

「中世ヨーロッパの絵の具の歴史」というタイトルですが、講演は2万年前のラスコーの洞窟壁画から始まりました。旧石器時代の洞窟壁画では、顔料としては土が使われていました。では土をそのまま壁に塗ったのかというとそうではなく、水で溶いた土を口に含んで吹き付けたり、動物の血を混ぜたりして「絵の具」にしていました。唾液や血液といったタンパク質が固着材=糊剤(メディウム)の役割をしていたわけです。顔料+水+メディウムという絵の具の構造は、現在も2万年前も変わっていません

一気に時代が飛んで中世には、今回の講演の中心であるテンペラが現れます。テンペラとは卵をメディウムに使った絵の具の技法です。テンペラ技法が使われた有名な作品といえばボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』。

テンペラの作品は経年劣化が少なく、色が鮮やかに表現出来るという利点があります。また、卵の乳化作用によって水と油の両方を添加できる上に、固まると水にも油にも強いというのがテンペラの特徴。しかも固まる時に収縮しないので絵の具のひび割れがありません。確かに中世のテンペラ画は数百年経っているのにあまり傷んでいないですね。『ヴィーナスの誕生』も色鮮やかです。

しかしテンペラにはデメリットも大きかった。まず厚塗りが出来ないこと。そしてグラデーションやぼかしの技法がやりづらいこと。そして絵の具が保存できず、その都度ごとに自作する必要があるということです。そうしたデメリットを克服して開発されたのが油絵の具でした。

さらに16世紀には、木枠に布を張ってつくるキャンバスが登場。これは船の帆をつくる技術の副産物のようです。それまでは木の板や壁に描いていたのですが、こうして大きな作品をつくれるようになりました。そして油絵の具も、乾性油に揮発性油を混ぜ、顔料とともに練ることで粘度の調整ができるようになりました。これによって非常に細かい部分まで描くことが可能になります。レンブラントの『夜警』など細部まで描かれた大作は油絵ならでは。

産業革命が起こると、画家が自分で絵の具を調合していた時代は終わりを告げ、絵の具は「商品」になりました。このため野外に絵の具を持っていくことができるようになります。それまでは絵の具の調合道具などが必要で工房でないと絵を描くのは難しかったのですが、外で手軽に絵が描けるようになって、光の加減や空気の揺らぎといった一瞬の「印象」を絵画で表現しようというムーブメントが起こります(→印象派)。

そしてドイツのオットーによって1901年にアクリル樹脂が開発されると、これが絵の具のメディウムに活用され「アクリル絵の具」が誕生。いわゆる「ペンキ」ですね。1920年代には「メキシコ壁画運動」(メキシコのアイデンティティの確立のために民族主義的で大規模な壁画が盛んに制作された運動)が起こりますが、壁画は屋外であるため、耐久性のある画材が必要だったと言う事情もあり、アクリル絵の具が普及していきます。

なお、アクリル絵の具が芸術作品で使われた最初は、ピカソの『ゲルニカ』(1937)ではないかということです。『ゲルニカ』はご存じの通り横が8m近い超大作。ピカソは、納期(万博での展示)が迫っていたため、この超大作をたった1ヶ月で完成させるのです。反射の少ないマットな質感、大画面でも亀裂や剥離が起こらない、そして乾くのが早いといアクリル絵の具の特性から、ピカソは敢えてこの作品にアクリル絵の具を使ったのではないか、とのこと。確かに油絵の具だと乾くのに1週間くらいかかりますよね。ただし、『ゲルニカ』の絵の具を採取し分析することはできないため推測だそうです。

今までアクリル絵の具が優れた画材だとは思っていなかったのですが、講演を聞いて、テンペラ絵の具や油絵の具の短所を克服した、到達点的な絵の具なのだということがわかりました。そういわれてみれば、ペンキで大面積(大きな看板とかビルの壁面とか)を塗ることは比較的容易ですが、人類の歴史においてこんな大面積に彩色できるようになったのは現代になってからです。油絵の具で大面積に彩色するのは現実的に不可能でしょう。講演のおかげで、テンペラの面白さもさることながら、アクリル絵の具の優秀さに気付きました。

それから、これは講演後に個人的に質問してわかったことですが、なぜテンペラ作品には金箔が貼られたものが多いのか。

例えばこちらの『荘厳の聖母』(ジョット・ディ・ボンドーネ)。テンペラ技法で描かれた作品です。画面には金箔がふんだんに貼られております。

この金箔によって荘厳さや権威性を表しているわけですが、油絵時代には金箔があまり使われず、なぜこの時代に金箔が多用されるのだろう……と思っていました。

実はテンペラと金箔は相性がよく、逆に油絵と金箔は相性が悪いのだそうです。というのは、金箔の上に油絵の具を載せると剥離しやすく、また油絵の具は乾燥するときに収縮するため、上に貼った金箔にシワが出来る! 油絵の具の場合は、金箔の上でも下でも都合が悪いのです。

一方、テンペラは金箔の上にも描けるし、乾燥する時にも収縮しない。だから金箔が使えるんだとのことでした。なるほど! また、日本画も「膠(にかわ)テンペラ」でありテンペラ技法の一種であるため、日本画には金箔が使えるわけです。そうだったのかと膝を打ちました。

実際の講演は、2時間近いものでしたので内容盛りだくさんで、ここにまとめたのはごく一部です。私自身は絵を描いたりはしないのですが、自分でも絵を描く方にはもっと別の角度から興味深い点がいろいろあったと思います。

このような情報量の多い講演をしていただき、きはらさんにはこの場を借りて改めて感謝です。次回の「そらまどアカデミア」は未定ですが、また面白いものになるよう検討していきたいと思います。お楽しみに!

2023年2月2日木曜日

【お客様の声】「罪の意識を持ちながら注文いたしております」

このブログでは販売をお知らせしていませんでしたが、「無農薬・無化学肥料のポンカン」の今季の販売が終わりました。

↓こちらの記事で書いていた通り、昨年夏にポンカンが虫害で大打撃を受けて、収量は過去最低でした。

【参考】ミカンナガタマムシのせいでポンカンが壊滅…! やはり無農薬栽培は難しい。
http://nansatz-kurashi.blogspot.com/2022/11/blog-post.html

私は、着果具合の見た目から「収量は平年の10分の1程度」と見積もっていたので、一般販売はしないかも…と思っていました。

しかし、実際に収穫してみたら収量は平年の5分の1程度でした。思ったよりよかった(…といっても過去最低ですけどね…)。

そんなわけで、量は大変限られていましたがひっそりとポンカンの販売をしたところ、2週間くらいで売り切れました。

そして今回、注文メールに嬉しいコメントが書いてあったので、せっかくだから紹介したいと思います。

ポンカンが急遽販売されて、嬉しいです!! 少ないのに2個は申し訳ないと躊躇しましたが、罪の意識を持ちながら注文いたしております。(東京都 Hさん)

今年はポンカンを諦めていました、こちらの商品を食べてからは他社のポンカンを食べる気にならなかったので、とても嬉しいです。
沢山欲しいところですが、独り占めしては申し訳ないので今回は1箱のみの注文に致しました。(東京都 Tさん)

今年はないのか、、と 思っていたので嬉しいです。(大阪府 Tさん)

「罪の意識を持ちながら」とか「独り占めしては申し訳ない」とまで思っていただき、有り難いやら、もうしわけないやら…。こんなに気を遣われている生産者も珍しいと思います。そもそも無機質な注文フォームでの注文なのに、わざわざ備考欄にコメントをくださるということ自体、大変な心遣いです。

来年は、このように気を遣っていただかなくて済むよう、生き残っている樹に関しては豊作になることを目指して取り組んで行きます。というわけで、早速剪定作業に入りました。

皆さん、いつもありがとうございます!