2025年5月18日日曜日

南さつま市にゆかりある人に広く読んでいただきたい本=『南さつまを歩く』を刊行しました

このたび、私=南薩の田舎暮らし代表(窪 壮一朗)が執筆した本が刊行されました。

『南さつまを歩く——福元拓郎さんのふるさと語り(加世田編)』(南さつま市観光協会)です。

この本は、南さつまの「名物ガイド」である福元拓郎さんのお話をまとめたものです。なので、私が執筆といっても、内容は福元さんによるもの。福元さんは、ふるさとの歴史や変転にずっと関心を持ち続けてきた方です。

福元さんは、「武将の〇〇が××の戦いで…」というような大文字の「歴史」だけでなく、例えば井川(井戸として使われた小川)がどうであったかとか、小学生がどうやって遠くの学校に通ったかといったような、人々の生活の場の歴史にも詳しいのです。

その上、福元さんの語りはとっても軽妙! 単に知識を伝えるだけでなく、面白おかしく、飽きさせずにしゃべるというのはなかなかできることではありません。時々織り交ぜられるギャグもいい味だしてます。

そんなわけで、南さつま市の観光と言えば福元拓郎さん! という状態が続いてきました。

福元さんは「加世田いにしへガイド」というガイドの団体も組織し、ガイドの育成にも取り組んできました。ですが、だんだん福元さんも高齢になってきたため、「福元さんのガイド知識を後世に伝えるために協力してほしい」という依頼がガイド団体の母体(NPO法人南からの潮流)から、南さつま市観光協会に相談がきたのが2017年ごろです。

その頃、私といえば南さつま市の一大イベント「吹上浜 砂の祭典」に協力していて、聞き書きのインタビュー記事をいくつか書いていました(ボランティアです)。2017年の「砂の祭典」がちょうど30回記念大会だったことで作った記事でした。

【参考】おかげさまで30回記念 - 【公式】吹上浜 砂の祭典 in 南さつま
https://www.sand-minamisatsuma.jp/30th/
※上のサイトの中の「「砂の祭典」にかける想い」という記事群が私が書いたものです。

一方、私は南さつま市観光経協会の広報部会では名前だけの(=時々部会に出るだけの)部員だったんですが、「砂の祭典」のインタビュー記事を書いていた関係上、「窪さん、協力してよ」とお願いされたんだったと思います。NPO法人南からの潮流は、当時「砂の祭典」でかなり大きな存在感があって、「砂の祭典」の会議などで関係者と同席する機会が多く、顔見知りになっていたからでしょう。

ただ、向こうからのお願いが具体的にどんなものだったのかは、どうにも思い出せません……。内容はともかく、私は安請け合いしたような形だったと思います。

ところが、実際に福元さんの話をまとめようとすると、さっきの「砂の祭典」のようなちょこっとしたインタビュー記事のようなものでは全く不十分だということがわかりました。何しろ、とんでもなく話題が豊富で、要点だけまとめればいいというようなものではなかったんです。

そこで腰を据えて聞き書きをすることを決意し、結局、約2年かけて27回のインタビューを行いました。1回あたり3〜4時間はかけたので、聞き書きのためのインタビューだけで100時間くらいかかっています。文字起こしとその確認・修正の時間も同じくらいかかっているので、原稿の元になる聞き書き原稿を完成させるのに200時間くらいかかった計算になります。

さらにその後、実際に南さつま市の各地を巡って写真撮影をしました。夏場は草ボウボウになって写真が撮れない場所が多かったので、1ヶ月に1回を基本として冬を中心に2年間かけて回りました。 そんなわけで、インタビューと写真撮影だけで4年間もかかったのですが、さらにそれを原稿として整理する作業がありました。これは鹿児島の出版社「燦燦舎」にご協力いただきました。

そうしてやっと完成したのが今回の本です。しかもこれで終わりではなく、「金峰・大浦・笠沙・坊津編」という、旧4町の分もこれから編集して刊行します。2017年に引き受けたときは、まさかこんな長丁場のプロジェクトになるとは思ってもみませんでした。

結果として出来上がった本は、当初の目的の「ガイドの知識」を伝えるだけのものではなくて、「南さつまを知る」ための本になったと思います。実際、これは観光ガイドのようなものではなくて、南さつま市にはどんな歴史・名所・旧跡があるのか、どんな場所だったのか、 各地域の特徴はどんなものなのか、どんな産業がどうやって発展し衰退していったのか、人々はここでどう生活していたのか、といったことを縦横無尽に語っている本なのです。

特に、自治体が作る郷土誌のようなものとは全く違うのは、「あそこには昔こんな店があって…」「ここの道路が改修されたのは…」というような、生活者視点の現代史が語られていることです。こういうことは、意識的に遺していかないと忘れ去られていくことなので、この本でその一端が残せたことは価値があるのではないかと思っています。

というわけで、観光ガイドとか関係なく、南さつま市にゆかりある人に広く読んでいただきたい本です。なお一般の書店には流通していないので、
きやったもんせ南さつま (加世田)
books & cafe そらまど (大浦)
books & cafe そらまど のオンラインショップ
でお買い求めください。どうぞよろしくお願いします。

 

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