畑全体が穴ぼこだらけ。イノシシのしわざです。
この光景を見た瞬間、「ガザ地区」が心に浮かびました。一夜にしてめちゃくちゃにされてしまう悪夢。もちろん、この畑とガザ地区の被害とは比べものになりませんが、まるで爆撃されたような穴ぼこだったのです。
ちなみにここは、柑橘の苗木を植えている区画ですが、幸いにして完全に倒れた苗木はなかったです(ただし根をブチブチちぎっている)。イノシシが意図的に苗木を避けてくれた……わけはなく、偶然でしょう。不幸中の幸いです。
なお、このようにボコボコにされてしまうと、機械が入れないため、大変ですが穴を埋めます。鍬一本の作業です。半日かかってしまいました。
こちらはブンタン畑の様子です。ちょっとわかりにくいですが、画面右上から右下に延びている、葉っぱもなにもついていない枝があります。
じつは、この枝にはたくさんの実がついていました(もちろん葉っぱも)。イノシシが、その実を全部食べちゃったのです(葉っぱは、ウサギが食べたのかも)。
こんな感じで、だいたい胸から下にある果実は全部食べられてしまいました。
下に垂れ下がった枝は「下垂枝(かすいし)」といって、そもそもあまり好ましくない(地面に果実がついたりするため)とされていますので、私の管理の責任もありますけど、それにしてもむごい。ただでさえ今年は柑橘が不作だというのに、唯一豊作になっているブンタンを何十キロか分食べられるとは…。
こちらは、「河内晩柑」というブンタンの畑です。ここでも同様、地面近くの果実は全部食べられてしまいました。というか、地面近くじゃない果実まで枝を折って食べています。
河内晩柑は、今季初収穫を迎える品種です。全体的に柑橘が不作な中でも、初収穫というのは今後の希望になるものなんですが…なんとついている果実の半分以上(!)を食われてしまいました。まだ若木だから樹高が低いためです。しかも枝も折られてしまって。どうしようもありません。
こんな風に、今年は柑橘類のイノシシ被害がとんでもないことになっています。例年、こんなに食べられることはないのですが。
『シーシュポスの神話』というアルベール・カミュの作品があります。神の怒りをかったシーシュポスが、大きな岩を山頂まで押して運ぶという罰を受ける話です。しかしこの岩は山頂に来るとまた転がり落ちてしまい、また最初からやり直しになる…という、なんとも徒労感のすごい罰なのです。
まさに今年の柑橘栽培は、シーシュポス感がありました。一年間管理してきた果実がかなりの割合でイノシシに食われるとは……。
もちろん、農業とはそんなものだ、といえばそれまでです。これまでも虫害、鳥害などでかなりの被害をたびたび受けてきました。でもイノシシは虫害や鳥害などよりずっと腹が立つのです。
なぜなら、イノシシは畑を穴ぼこだらけにしたり、苗木を倒したりといった栽培の妨害・邪魔をするのに、果実もちゃっかりいただくからです。果実が欲しいなら栽培の邪魔はしないでほしい! むしろ草取りとかするなら、ちょっとぐらい分け前をあげてもいいのに…。
一方、鳥たちは果実は食べますけど、栽培の邪魔はしません。虫は、うまくやれば被害を防げます。鳥や虫はまだ許せる。でもイノシシとの共存は不可能!
年々、イノシシ被害がひどくなってきています。過疎化によって町(というか村)が小さくなり、山との距離はほとんどゼロになってしまいました。イノシシは豊かな山の恵みによって野放図に繁殖し、我が物顔で人里をのし歩いています。
来年は同じことにならないよう、剪定のやり方を工夫してみるつもりです。