2024年9月5日木曜日

第14回そらまどアカデミア「もう一つの十五夜綱引き」を開催します!

加世田唐仁原の十五夜綱曳きずり(1992年、撮影井上)

10月6日(日)、そらまどアカデミア開催します。

今回のテーマは民俗学です。

民俗学って、あまり知られていない学問かもしれません。なんとなーくこんな感じ、というのはあっても、具体的にどんな研究をしているのかというとイメージがないのではないでしょうか。

そんな民俗学に、ライフワークとして取り組んできたのが井上賢一さん。

井上さんは、「南さつま半島文化——鹿児島県薩摩半島民俗文化博物館」というWebサイトを主宰しています。

「南さつま半島文化」は、「インターネット博物館」と銘打っているのですが、「博物館」というだけあって、とんでもなく情報量が多いんです。

ここには、 「南さつま歴史街道」「鹿児島祭りの森」「鹿児島の祭りと民俗」など歴史や民俗についてのコンテンツがあり、なんと子ども用の学習ページ「こども博物館」まであります。

このうち、例えば「鹿児島祭りの森」には、地域のお祭りについて大量の項目があり、それぞれの解説、祭の構造、ビデオ(YouTube動画)などなどが豊富にアーカイブされています。

一例として、「南薩の田舎暮らし/そらまど」のある大浦町の「疱瘡踊り」はこんな感じです。

【参考】大浦町の疱瘡踊り
https://hantoubunka.site.kagoshima.jp/pic/0204hoso.html

趣味で作ったレベルじゃない、っていうのがすぐ分かると思います。…すごいですよね! 

井上さんは、こうした調査をライフワークとして続けてきました。といっても仕事ではありません。あくまでも趣味ではあるのですが、結果としてできあがった「南さつま半島文化」は、趣味のレベルを超えて、公共的な価値があるものとなっています。このサイトの情報をどう次世代に残して行くか、これが現在の課題といっても過言ではありません…!

ところで、最近、奈良県の民俗文化博物館が収蔵品の整理のために休館するというニュースがあり、ちょっとだけ民俗学について注目が集まりました。今こそ井上さんに民俗学や民具について語ってもらいたい。そう思って講演を打診しました。

講演タイトルは「もう一つの十五夜綱引き」。

鹿児島って十五夜の綱引きが盛んですよね。川内大綱引きは有名ですが、その裾野にある地域の小さな綱引き祭りもたくさんあります。私は鹿児島育ちなのでよくわかっていませんでしたが、外に出てみると、他の地域では十五夜綱引きはこんなに盛んではないことに気付きました。

しかし鹿児島には、なんと綱を引かない「綱曳きずり」という祭りもあるんです。綱引きしないのに、なんのために綱をひきずるのか!? この「もう一つの十五夜綱引き」を入り口に、井上賢一さんに民俗学の世界についてご案内いただきます。ぜひご注目ください。

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第14回 そらまどアカデミア

もう一つの十五夜綱引き

講 師:井上賢一

南九州各地で盛んに行なわれる旧暦八月十五夜の「十五夜綱引き」。しかし鹿児島には、綱引合戦を行なわない「綱曳きずり」という習俗がみられる。なぜ十五夜に綱を引くのか、あるいは曳きずるのか、薩摩半島での記録映像を紐解きながら、考えてみたい。

日 時:10月6日(日)14:00〜15:30(開場13:00)
場 所:books & cafe そらまど (駐車場あり)
料 金:2000円(ドリンクつき) ※中学生以下無料
定 員:15名
要申込申込フォームより、または店頭で直接お申し込みください。※中学生以下は無料ですが申込は必要です。
問合せこちらのフォームよりお願いします。

<講師紹介>
高知大学卒業後、鹿児島大学で下野敏見に師事。ノンプロ研究家として鹿児島民具学会での活動をはじめ、民俗調査への参加や、各地の民俗芸能・年中行事を訪ねて歩く。研究成果をWebサイト「南さつま半島文化」で公開。

2024年9月3日火曜日

台風10号被害

台風10号、久しぶりにすごいのが直撃しました。

南薩の田舎暮らしがある大浦町では、8月28日の夜(11時頃?)に停電し、そのまま足かけ4日間、31日の夕方まで停電でした。

台風上陸前に停電を予想し、8月30−31日の「そらまど」を臨時休業にしておいたのはよかったです。停電+ケータイ圏外でInstagramにも投稿ができなかったので、もし台風後だったら休業の連絡ができなかったです。

足かけ4日間の停電は長いようですが、停電範囲の広さを考えると、これまでの経験から今回は5日間の停電を覚悟していたので、復旧は意外と早く感じました。今まで見たことのないくらいの九電の災害復旧応援班が走り回っていたような気がします。九電ありがとう!

大浦は僻地のため、台風の時には停電2〜3日がわりと頻繁にあります。なのでそれなりに準備はしていましたが、今回は台風の速度がすごく遅かったため、丸2日以上雨が降っていたのが困りました。うちの緊急時電源はソーラーなので、雨だと発電ができません。

家の冷蔵庫の食材が悪くなるのはしょうがないとしても、問題なのは食品加工の原料を保存している業務用冷凍庫! 冷凍のブルーベリーと木苺(きいちご)が何キロか駄目になってしまいました。晴れてからはソーラーで通電していたのですが、丸2日間停電していたのはやはり痛かった! やっぱり発電機が必要なのかなあ。

家屋は全て大丈夫でした。自宅、農業倉庫、食品加工所、「そらまど」の4つの建屋は全て無事でした。「そらまど」の瓦は絶対飛ぶと思っていたのに、飛ばなかったのがむしろびっくり。

農業の被害の方は、100本くらい柑橘の木が倒れることを覚悟していたのですが、意外と被害は大きくなく、50本くらい倒れただけで済みました。50本でも十分大きな被害なのですが、「前例のないような台風」と脅されていたため、「そこまででもなかったな」という気持ちになっています(錯覚)。

柑橘類の木は、種類によって風への強さがずいぶん違います。一番弱いのはベルガモットで、これは半分以上倒れました。残っている方が少ない。しかも倒れたのも、根元からボキッと折れて再起不能になったのも数本ありました。

次に弱いのがライム。ライムは、倒れたものが多いのは当然として、着果した果実の半分くらいがダメになってしまいました。ただ、もうライムとして使える果実になっているので、加工して活かしたいと思います。

あとはブラッドオレンジが数本と、不知火(しらぬい)が数本倒れました。このあたりは想定内の感じです。

倒伏した木については、起こして、木の杭を打ち込んで結束します。 

写真では杭が1本ですが、2本使う場合もあります。斜めに起こしているのは、真っ直ぐに起こしてしまうと次の台風でまた別方向に倒れる可能性が高いためです。斜めなら倒れたとしても同じ方向なのでさらなる被害を受けずに済みます。

ちなみに、木の杭で幹を固定する作業は、台風が来る前にも、倒れそうな木を中心に40本ほど行っています(ライムとブンタンを中心に)。根元が人間の足首くらいの太さの木が一番倒れやすいのですが、うちの農園には今ちょうどこのサイズの木がたくさんあるんです。タイミングが悪かった。

杭を打ち込む作業は、カケヤという大きな木製のハンマーを使って行います。これはなかなか大変な作業です。土が軟らかければそれほどでもないのですが、粘土質で硬い土のところでは打ち込むのが一苦労!

そして、ハンマーや木の杭など、さまざまな道具は運搬車に乗せて運び作業するのですが、なんとその運搬車のゴムクローラーが復旧作業途中に断裂してしまいました!

「泣き面に蜂」とはまさにこのこと。

「クローラーが圃場でちぎれたら大変だから、劣化してきたらちゃんと交換しよう」というのが教科書的なメンテの仕方です。だから、ちゃんとメンテしてない方が悪いのです。自業自得です。が、つい「まだ大丈夫だろう」「暇な時に交換しよう」と思っちゃうのです…。交換しないとなーとは思っていたのですが…。 

木の杭もあと10本ほどなので、残りは手で運んで打ち込もうと思います。

そして台風被害といえば、今回の台風は塩害がすごかった!

柑橘類の、新梢(新しい若葉)はほぼなくなってしまいました。成木の場合は無くなっても困らないのですが(むしろ新梢をわざわざ除去する場合もある)、苗木・若木の場合はかなりの被害です。

ブルーベリーは塩に弱いので、ほぼ葉っぱがなくなりました。ごく小さな苗木のブルーベリーは枯死するかもしれません(写真はブルーベリーです)。 

被害の様子はこんな感じですが、田んぼについては収穫後だったため実害はあまりなかったのは不幸中の幸いというところです。

最後に、うち以外の被害についてですが、大浦町ではそれほど大きな被害はなかったようです。もちろん農業では、ビニールハウスが傾く、ビニールが破れるといった被害は散見されますが、大規模な崖崩れとか浸水とかはなかったという意味です。

地球温暖化・気候変動の影響で、今後巨大台風が次々襲来するようになるのではないか、という恐ろしい予測もあります。そうなったら農業のやり方も考えないといけないですよね。比較的被害が少ないカライモ(サツマイモ)を多くするとか(今回は、カライモも塩害を受けているのですが)。

これを読んでいるみなさんの中にも、被害があった方もいるのではないかと思います。速やかに復旧が進み、また元通りに穏やかな暮らしが戻ってくることを願ってやみません。

とりあえず、もう台風はたくさんですね!