2023年10月12日木曜日

第9回そらまどアカデミア「『三国名勝図会』という世界」を開催します!

11月12日、第9回そらまどアカデミアを開催します!

皆さんは、『三国名勝図会』って聞いたことありませんか? 

これは江戸時代後期に薩摩藩によって編纂されたもので、鹿児島の伝説、特産品、名所、そしていろんなエピソードがてんこ盛りに書かれた本です。鹿児島で歴史に興味がある人は、必ずぶち当たる史料ですよね。

が! 『三国名勝図会』は、有名な割には意外と読まれていません。

というのは、あまりに大部すぎるからでしょう…。国会図書館デジタルコレクションでも見ることができますが、やっぱり紙の本でないと通読は困難。そして、紙の本は、全5巻セットで二万円くらいしますから、これまたちょっとハードルが高い。私自身、通読していません。

というわけで、多くの人が気になりながらも全貌が明らかでない『三国名勝図会』について、今、鹿児島で一番『三国名勝図会』を愛読しているといっても過言ではない、川田達也さんに語っていただくことにしました。

下の説明を読んでみて下さい。「笑いあり涙ありの文学作品集なのである」 なんて、愛読している人からしか出てこない言葉だと思います。どんな笑いや涙があるのか、興味津々です。

ぜひ一緒に、『三国名勝図会』の世界に遊びに行きましょう!

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第9回 そらまどアカデミア

『三国名勝図会』という世界

講 師:川田達也

薩摩藩が残してくれた地誌『三国名勝図会』。豊富な絵図と記述をもって、江戸時代の鹿児島の姿を現代に伝える重要史料だ。しかしその正体は、史料という枠を飛び越えた、笑いあり涙ありの文学作品集なのである。そんな『三国名勝図会』が描き出す魅惑の世界をご案内する。

日 時:11月12日(日)14:00〜15:30(開場13:00)
場 所:books & cafe そらまど (駐車場あり)
料 金:1000円(ドリンクつき) ※中学生以下無料
定 員:15名
要申込申込フォームより、または店頭で直接お申し込みください。※中学生以下は無料ですが申込は必要です。
問合せこちらのフォームよりお願いします。

<講師紹介>
1988年鹿児島市生まれ。古寺跡写真家。大学在学中に廃仏毀釈を知り、卒業後に帰郷。以来鹿児島の古寺跡を撮り続けている。著書に『鹿児島古寺巡礼』(南方新社)。毎週金曜日、あいらびゅー FM に出演中。

2023年10月10日火曜日

第8回そらまどアカデミア開催しました! 仮面は非日常の存在

第8回そらまどアカデミア「仮面による文化形成」開催いたしました。

今回は、募集開始後、なかなか申し込みがありませんでした。ちょうど鹿児島国体が始まっていろんなところでイベントが行われていたためかもしれません。しかし開催直前になって立て続けにお申し込みをいただき、最後は「定員いっぱいです」と断るハメに…。またの機会によろしくお願いいたします。

講師の漣(さざなみ)俊介さんは、南九州市頴娃で「ギャラリー蛇足」を運営する傍ら、グラフィックデザイナー、一コマ漫画家、お香製造(鳴音(めいおん))など、様々なことに取り組んでいらっしゃいます。そんな漣さんが、ご夫婦でやっている(やっていた?)活動が「仮面夫婦プロジェクト」という仮面作りワークショップです。

なんで仮面? と思っていましたが、 きっかけは、新婚旅行で海外に行ったときに、現地で買った仮面を夫婦でつけたら「意外と楽しい!」と感じたからだそうです。そして、旅先で仮面をかぶって写真を撮るという活動をやっているうちに、「やっぱり自分で作らないと」となって仮面を作るようになり、仮面作り(彩色)ワークショップをやるようになったんだとか。

また、漣さんは姫路の出身で、お祖父様が「姫路はりこ」のコレクターだった影響もあるんだとか。恥ずかしながら「姫路はりこ」って知りませんでした。姫路ではかつて張り子のお面作りが盛んだったそうです。

では、なぜ姫路で張り子お面が作られたのか。このあたりから本論に入っていきます。「姫路はりこ」は古くからの産業ではなく、明治以降に盛んになったとのこと。近代には、武士や農家の副業として各地でお面作りが行われるそうですが、姫路もそうしたものの一例です。

姫路は城下町だったので、張り子づくりに必要な材料が揃っていました。具体的には、(1)反故紙、(2)布海苔(海藻から作る糊)、(3)型(瓦で型をつくった)、(4)胡粉(貝を砕いた粉、表面処理に使う)、(5)膠(動物性強力接着剤。姫路は革製品が有名だったため)、といったものが集まっていたからこそ張り子が産業となったのです。

このように、「文化ができるにはワケがある」。つまり、文化は何もないところから生まれるのではなく、その材料や風土や習慣、社会情勢によって存立するということです。

ここで、漣さんは世界各地の仮面について紹介していましたが、画像がないとよくわからないのも多いのでそれについては割愛します。

さて、姫路の張り子は近代以降のものでしたが、近代のお面は、仮面がカジュアル化した、「再構築されたもの」だといいます。どういうことでしょうか。

世界最古の仮面は、約9000年前のイスラエルの石仮面だそうです。 ちなみに日本最古は縄文時代の土面。こういったものは何のために作られたかというと、もちろん、これらは精霊や神といった超自然的な存在を表象するものでした。

しかし世界の諸民族が全て仮面を持ったかというとそうでもなく、仮面を持つ民族と持たない民族がいました。諸説あるそうですが、その違いは、定住するのかしないのかだ、というのが文化人類学者らの考えだそうです。つまり、定住して農耕や狩猟生活を営む以上、自然災害などがあっても簡単に移動はできないので、人間を超えた存在に祈るしかない。その存在を可視化したのが仮面であったと言います。

このように仮面は元来、霊的・宗教的な意味を帯びていたのが、科学の発展によってそうしたものに頼らなくてもよくなると仮面は形骸化し、再構築されることになります。

ここでいう再構築とは、“「演者」と「観客」を作る装置”という仮面の機能を利用し、エンタメや芸術、調度品として新しい仮面の居場所が作られていった、ということを指しています。

例えば、大衆劇や伝統芸能、仮面ヒーロー、仮面舞踏会、コスプレといったものが近代以降の仮面活躍のフィールドとしてあげられます。これを漣さんは「広がっていった仮面」と表現していました。

そして現代では、SNSのアバターやアイコンも仮面の一種と捉えられます。仮面をかぶることによって、「顔を隠した人間」が生まれるのですが、SNSの匿名性はまさに仮面をかぶったことと相似しています。これは決して悪いことばかりではなく、人間は常にペルソナ(外的側面=社会的仮面)を使い分けているのですから、SNSと言う場に似つかわしい仮面に付け替えているだけとも言えます。

そして、バンクシーの落書きが、その匿名性・正体の謎さによってより魅力的なメッセージとして受け取られているように、正体不明さは時として人に力を与えます。漣さんは、バンクシーのメッセージは「政治など個人ではどうしようもない巨大な力に対して忠告を与えて去って行く」という点で、古代の「来訪神」と似たような性質があると感じているとのこと。

つまり、仮面をかぶることによって、普通にはできないことができるようになるのだ、というのがまとめでした。

ところで、漣さんの話し方は独特な間(ま)があって、その間にいろいろと考えさせられました。

例えば、日常生活で仮面をかぶっている人がいたらかなり異常なので、仮面をかぶるためには「顔を隠すことが了解されたシチュエーション」が必要です。例えば、祭りとか、遊びとか、演劇とかです。お祭りのテキヤさんが子どものお面を売っているのも、お祭りが「顔を隠すことが了解されたシチュエーション」だからですね。

逆に日常の生活の中では、仮面は異常性の表象ともなります。浦沢直樹のマンガ『20世紀少年』で、「トモダチ」が子どもの頃の回想で常に仮面をかぶっているのも一種の異常性を示すものですよね。

そう考えると、古代人が精霊や神を単に具象的に表現するのでは飽き足らず、それを仮面にして「演じる」ことができるようにしたのは意味がありそうです。仏像や神像でも十分にその神聖性を表現することはできると思いますが、精霊や神の面は、かぶること自体にただならぬ意味があるわけです。異常な世界、非日常の世界にいっちゃうということですから。これがお面と像との最大の違いだと思いました。

漣さんと奥さんが「仮面をかぶって意外と楽しかった」というのも、海外旅行という非日常の世界だったからでは? 

ちなみに「仮面夫婦プロジェクト」には、「外面的には夫婦だけど、実際には冷え込んだ関係」というマイナスの意味の言葉「仮面夫婦」を、プラスの意味に変えていこう、という意気込み(?)があるそうです。しかしやはり「仮面夫婦」はプラスの意味になったとしても、異常な存在、非日常の存在ではあり続けるでしょう。

もしそれが日常の存在になったとすると、「仮面をかぶることによって、普通にはできないことができるようになる」という古代以来の仮面のパワーが失われた時なのかもしれません。今のSNSでアバターやVtuberが、普通の人と別に変わらない存在として受け取られはじめているのは、その前触れかもしれません(笑)

2023年10月1日日曜日

「南薩の田舎暮らし」が、10周年を迎えました!

「南薩の田舎暮らし」が、10周年を迎えました!

これは、多くの方にご支援いただき、たくさんのお客様に恵まれ、応援いただいているおかげです。改めてありがとうございます!

統計によると、90%以上の会社が創業10年以内に廃業するそうです。うちは法人ではなく「南薩の田舎暮らし」は屋号ですから単純には比べられませんが、一応10年続けて来られたのは誇らしいです。

実際、「南薩の田舎暮らし」が活動している間にも、いろいろな人たちが活動を始め、そして辞めていきました。別に長続きするのが偉いわけではないですし、時には撤退するのも重要です。私たちも、もしかしたら大浦町で細々と農業や食品加工をするより、都会で働いた方がよりよい暮らしがあったかもしれません。

でも、私は今の暮らしが気に入っています。そして、今やっている農業や食品加工やカフェの経営といったものは、それなりに地域に貢献できているような気がします。10年やってきても華々しい活躍といったものはないですが、やろうと思ったことを実現し、続けられていることに感謝したいです。本当にみなさんのおかげです。

というわけで、感謝の気持ちを込め、2023年10月は、南薩の田舎暮らしのジャムとシロップを10%offで販売することにしました。対象は「南薩の田舎暮らし」のショップサイトと、「books & cafe そらまど」での販売、それから「石蔵ブックカフェ」(10月28日)の販売です。 ぜひご利用ください。

↓南薩の田舎暮らし
http://nansatsu.shop-pro.jp/

そして、何を基点に10周年なのか、ということについて説明します。

実は、大浦町に移住してきた時に「南薩の田舎暮らし」というタイトルでブログをしていました(現「南薩日乗」)。そして最初に始めた農業のポンカンを販売するのに、そのブログタイトルを流用して「南薩の田舎暮らし」ショップサイトをつくりました。ここまでは「南薩の田舎暮らし」前史で、10年の期間の前になります。

そして2013年8月に小さな食品加工所を建設し、「南薩の田舎暮らし」を冠してジャム(南薩コンフィチュール)を製造販売しました。ここが「南薩の田舎暮らし」という屋号での活動が実体化した時と判断しております。なので2023年8月で10周年を迎えたというわけです。

なので、本当の10周年は8月でしたが、8月は農繁期で忙しく準備ができないため、10周年記念の10%offセールを行うのが2023年10月というわけです。そして農産物が対象になっていないのは、農業はそもそも「南薩の田舎暮らし」を冠する前からやっていて10周年とは言えないためです(もう11年)。

話は変わりますが、10周年ということで過去の記録を見直してみました。

初めて5年間くらいは、自分でも驚くほど、夫婦二人でいろんな仕事をしていました。まさに生きるために必死だった感じです。各地のマルシェでの出張販売も精力的にやっていました。その後、コロナ禍になって活動が制限され、マルシェもなくなり、3年ほどは活動が停滞していました。その中で「books & cafe そらまど」をオープンしたのですが、初めの方に比べると、ずいぶん低空飛行になっています。10歳年をとったから、というのもあります。

確かに、だんだん無理はきかなくなりますが、20周年を目指して、もうちょっと頑張っていきたいですね。皆さん、あらためてよろしくお願いいたします。