2023年5月18日木曜日

第6回そらまどアカデミア「竹の音に魅せられて」

第6回そらまどアカデミア開催します!

今回は室屋無吹さんに「竹の音に魅せられて」というタイトルで、尺八の演奏を交えつつ、尺八の歴史について語ってもらいます。

先日、今回講師をお願いする室屋さんの「無吹庵」に行ってきました。

これは月に一回やっている、「尺八と触れる場」みたいな催しです。

久しぶりに室屋さんの演奏(…もはや「演奏」と呼ぶべきなのか疑問)を聴きましたが、うーん、すごいとしか言いようがないです。

これは我々が知っている「音楽」ではなく、「音」。譬えるなら、カールハインツ・シュトックハウゼンの「コンタクテ」みたいな(←譬えが難解すぎますけど、なかなか適切な譬えができません)。

室屋さんは幼い頃からピアノをやっていたそうですが、楽譜通りに弾かなくてはならないコンクール主義に疑問を持っていたところ、高校生の頃に観た黒澤明の映画で邦楽の響きに魅せられて尺八を手に取ったそうです。

実は私も、黒澤明の「蜘蛛巣城」の笛の音に高校生の頃にやられたクチです。あのかすれたような、美しい音とは言えないのに妙に心を捉える笛の音は、「音楽」ではない「幽玄の世界」を垣間見せてくれましたよね…。

ちなみに室屋さんがやっていたのは、最初は「普通の尺八」でした。「普通の尺八」というのは、西洋の音階を奏でられるようにした現代楽器としての尺八です。しかし実は、本当の(伝統的な)尺八はそんなものではなかった!

美しい音階を奏でるのではなく、むしろ竹の息吹を鳴らすのが本来の尺八であり、調律をしていない(というか調律という概念の外にある)「地無し尺八」が本来の尺八だったのです。

だから写真のように、いろいろな大きさの尺八がありますが、「これ調律どうなってんだろ」とか思っちゃいけません。いろんな高さで音が鳴る、それが尺八です。室屋さんは5年前からこの「地無し尺八」を上村風穴氏に師事し、鹿児島では第一人者的な存在となっています。

そしてこれは、時代劇に出てくる虚無僧(こむそう)が吹いていた尺八なんです。虚無僧たちは尺八を楽器として吹いていたのではなく、「法器」として、修行として吹いていたのでした。尺八によって悟りの境地に至れる、というのが虚無僧たちの奉じていた教え(普化宗)でした。

私は、「尺八で悟れるなんて無茶な!」と思っていたのですが、室屋さんの尺八を聴いて考えが変わりました。少なくとも尺八によって法悦(=トランス)状態になるのは間違いなさそうです。トランスといっても、リズムによるトランスではなく、「音のゆらぎ」によるトランスです。

ところで、私が無吹庵にいる間、他のお客様もいたのですが、その中の一人がディジュリドゥというアボリジニの楽器を吹く方でした。ディジュリドゥとは、曲がったユーカリの木の内部がシロアリに喰われて空洞になったものを利用して作られる最古の楽器(の一つ)だそうです(写真参照)。

少し演奏してくださいましたが、これまたトランスに陥りそうな、不思議な音色でした。この楽器には音孔がなく、そもそも音程を奏でるものではありません。循環呼吸によって途切れずに音を鳴らしながら、「音のゆらぎ」を重ねていく感じです。これも法悦的ですねー。

こういう楽器を奏でる方が心惹かれるのが「地無し尺八」なんです! どういう存在なのか、少しは伝わるのではないでしょうか。 (少なくともシュトックハウゼンよりは(笑))

室屋さんの講演では、「古典本曲」と呼ばれる伝統的な尺八の曲も演奏してくださるそうです。我々が普段聴いている音楽とは別の「幽玄の音の世界」が垣間見えるものになるはずですので、どうぞお楽しみに。

 ★本講座は、2022年11月に予定し、講師都合で中止になったもののリベンジ企画です。

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第6回 そらまどアカデミア

竹の音に魅せられて

講 師:室屋無吹

「尺八」と聞いてパッと思い浮かぶのは虚無僧ではないでしょうか? 実は虚無僧が吹いていた尺八と、現代の尺八には大きな違いがあるのです。その両方を吹き比べながら、日本画から尺八の歴史を読み解いた泉武夫著『竹を吹く人々』を参考に、その変遷を辿ってみましょう。

日 時:2023年6月11日(日)14:00〜15:30(開場13:00)
場 所:books & cafe そらまど (駐車場あり)
料 金:1000円(ドリンクつき) ※中学生以下無料
定 員:15名
要申込申込フォームより、または店頭で直接お申し込みください。※中学生以下は無料ですが申込は必要です。
問合せこちらのフォームよりお願いします。

<講師紹介>
尺八の音に魅せられ20年。5年前より地無し尺八奏者の上村風穴氏に師事。現在、普化風韻会会員、虚無僧研究会会員。

2023年5月4日木曜日

GWまでにかぼちゃの受粉作業はほぼ終了

GWですね。「books & cafe そらまど」では、5月4-6日、10-18時で営業しております。よかったらお越しください。

ところでこの時期、私には重要な仕事があります。それはかぼちゃの花粉つけです。

私は、「加世田のかぼちゃ」を栽培しているのですが、ちょうどこの時期に開花するので、朝、雄花を取り、雌花に花粉をつけるという作業をしなくてはならないんです。

ちなみに、かぼちゃは真夏に育てる場合は受粉作業はしなくてもいいんです。この時期は夜の温度がまだ高くないので、花粉の量が少ないからこそ必要なのです。

そして、私の目標は、「GWに入るまでに受粉作業を終わらせる」ことです。なぜかというと、着果がGW後になると、かぼちゃを出荷する時期が7月にずれこんでしまいます。で、7月はかぼちゃの価格がガクっと下がってしまうんですね。なのでGW前には着果させ、6月中にかぼちゃを出荷したいのです。

今年は、作業が概ね順調に進み、管理もそれなりにしっかりできたので、GWまでにほぼ受粉が完了しました。おかげで「そらまど」の営業も心置きなくできます(笑)。それに、これまでのところ、生育もいいです!

ただ、4月10日あたりに一部が霜の被害を受けてしまい、その分はまだ開花すらしていません。全体では5%程度なので、たいした損害ではないですが。

ところで、今年はかぼちゃの一部を早採りして出荷するつもりです。「完熟」が売りの加世田のかぼちゃなので、本来は完熟させてから出荷なのですが、「books & cafe そらまど」の営業があると6月中に出荷作業が終わりません! そして7月に入るとC品率・返品率も高くなります(梅雨のため傷む)。

なので完熟でなくても6月中に出荷した方が単価が高く、時間的余裕をもって作業できるのではないか、というわけです。当然完熟でないので「加世田のかぼちゃ」ではなく、普通のかぼちゃとして出荷するわけですが、それでもたぶん、早く出荷した方が私の場合はメリットが大きい。

どうなるかやってみたいと思います!

2023年4月19日水曜日

川シジミのいる田んぼで

先日、田植えが終わりました!

柑橘やかぼちゃなど春の農作業はまだまだ一段落つきませんが、田植えが終わるとなんだか一区切りという気分になります。

しかし、今年の田植えは「なんとか終わらせた…」という感じでした。

というのは、最初は調子よく植えていたのですが、1反(10a)くらい植えたところで、田植機の様子がなんだかおかしくなったのです。

そのうちに「がぎぎぎぎぎ」という音がして、植えられなくなって(植え付け部が動かなくなって)しまいました。

おかしいな〜と思ってその場で試運転していると、再び植え付け部が動き出し、植えられるようになりました。「よかったー」と思って植え始めたのもつかの間、またしばらくすると「がぎぎぎぎぎ」となって動かなくなってしまいました。

植え付け部を改めて見てみると、10個ある苗を植え付ける機械のうち1個が折れて、筐体が内部から割れていました。これはもうその場では修理不可能です。田んぼの真ん中に工具を持っていって、壊れた植え付け機を取り除きました。10分の1植えられなくても、田植えが終わった方がよいという判断です。

故障した部分を取り除いたら、後は順調に田植えができました。完全に壊れてないでよかった。

しかしこの田植機、たった3万円で買った中古品で、買った時から故障していたくらいなので、もうそろそろ潮時ですかねー。でも大きさもちょうどよく使いやすいので修理してもう少し使いたいと思っています。

ところで、うちでは無農薬・無化学肥料でお米を作っているわけですが、なかでも一番条件がよい田んぼは、使っている水もいいです。(3箇所あるうちの1箇所)

そこの水は、自然の小川から水を引いています。小川なので一年中水が流れていて、こちらでは「川シジミ」と言っていますが、淡水シジミがたくさん住んでいます。このシジミって水を浄化してくれるそうですね。

またこの田んぼは、一昨年からは冬にレンゲを植えており、それ以外は無肥料にしました。ここの田んぼは、肥料はほんのわずかでも慣行栽培と遜色ないような収量が期待できるからです。やっぱり水がいいからでしょうね。

ちなみに、逆に最も条件が恵まれていないところは、水があまりない上に作土層が薄く、肥料を入れても慣行栽培の半分くらいの収量です。田んぼは水が命です。

川シジミがたくさんいるような水のところで田んぼを作りたいものですし、そのためには自然環境を保全していかないとと思います。機械はボロでもいいですが、自然はボロじゃ困りますね。

2023年4月14日金曜日

「そらまど」は、GWは5月4〜6日10:00〜18:00で営業します。

告知です!

今年のゴールデン・ウィークの「books & cafe そらまど」は、5月4〜6日の3日間、10:00〜18:00で営業してみることにしました!

普段は13:00オープン。

なので、「午前中に開いてたらいろいろ行きやすいんだけど」という声がありました。何しろ、「そらまど」は鹿児島の中でも辺鄙なところにあります。せっかくここまで来たらいろいろドライブして回りたい、というのが人情。しかし「そらまど」の営業時間が限られているため、遠出のスケジュールが制約されます。

ということで、GW中は午前中から開けることにしました。といってもランチがあるわけではなく、普段通りカフェのみですのでご承知おき下さい。

ちなみに、昨年もGWに営業しましたが、いつもよりお客さんが少ないくらいでした。他に魅力的なところがたくさんありますからね。どこでも人がごったがえすGWで、人の少ないところに来たくなったらぜひ「そらまど」へお越し下さい(笑)

なお、GW中の近隣のイベントなどを下にまとめました。ご予定の参考にどうぞ。

吹上浜 砂の祭典(5月3〜5日)【加世田中心部】

以前「砂の杜きんぽう」特設会場で行っていた「砂の祭典」は、コロナ対応のため「まちなか開催」になっています。南さつま市役所と加世田中心部に砂像があり、無料で観覧できます。夜は花火も。

https://www.sand-minamisatsuma.jp/

モジョぴく(5月3〜5日)【吹上浜海浜公園】

「砂の祭典」の関連イベント。ハンドメイド雑貨・アクセサリー、ワークショップ、キッチンカー、飲食販売など盛りだくさんのマルシェです。正直なところ、「そらまど」を営業するより、このイベントに出店する方がずっと売上はいいのですが、「休みが合わず普段は”そらまど”に行けない」という方のために「そらまど」で待ってますね。

https://www.sand-minamisatsuma.jp/mojopiku/

マリンランド笠沙フェスタ(5月3日)【笠沙運動公園】

昨年、ものすごく人気だったイベントです。以前は「ブリのつかみ取り」がメインでしたが、今回は、「イカダ釣り体験」「漁船クルージング体験」がメインになっています。「イカダ釣り体験」は往復ハガキでの申し込みが必要です。

https://www.city.minamisatsuma.lg.jp/living/event/e027975.html

吹上浜海浜公園春祭り(5月4日)【吹上浜海浜公園】

例年、観光協会のWEBサイトにお知らせが載るんですが、今年は掲載されていないようです(他、ネット上には情報がない模様)。音楽発表会、クラフト体験コーナー、警察・消防・自衛隊車 両展示などがあります。10:00〜15:00。

「アドベンチャーパーク森のかわなべ」(5月1日〜)【川辺】

これは正確にはGWのイベントではないですが、オープンが5月1日なのでついでに紹介します。川辺にできたアスレチック?というか森の中でワイヤーに吊られて遊ぶ施設。なんだかわからないと思いますのでリンク先をご覧ください。

https://www.city.minamikyushu.lg.jp/kankou/adventurepark_terzar.html

 

2023年3月22日水曜日

肥料や農薬を使わずに植物を元気にできるのが剪定

今年はポンカンを初め、柑橘類が不作で売り切れるのが早かったです。特にしらぬいは1日で売り切れる始末。もちろん大人気だったのではなく、数量が少なかったためです。

有り難いことにうちの柑橘類は売れ行きはよく、販売にはあまり苦労していません(大豊作の時を除く)。むしろ「欲しかったのに気付いたら売り切れだった!」と言われることが多く、本当に申し訳ありません。こう不作が多くては自分の収入が少ないだけでなくお客様にも迷惑がかかります。

というわけで、豊作を目指して毎年いろいろ工夫はしております。今年は、剪定のやり方を変えることにしました。

これまで、私は「弱剪定」でやってきました。 要するに剪定をあんまりしないということです。私は柑橘類を無農薬・無化学肥料で作っていますが、実際にはほとんど肥料を与えていません(といっても堆肥は撒布するので無肥料というわけでもありません)。

ほとんど肥料を与えないと、当然あまり葉っぱも繁りません。だから剪定も弱くてすむ…という理屈です。

しかし最近、いろいろ試してみて、タンカンやしらぬいは大胆に剪定した方が調子がよいということがわかってきました。というか、こいつらは無肥料でもけっこう旺盛に生育します。だから剪定が弱いとよくないようです。

ところで以前、「もしかしたら、タンカンには肥料をやった方がいいのかもしれない…!」という記事を書いたことがあります。

【参考】もしかしたら、タンカンには肥料をやった方がいいのかもしれない…!
https://nansatz-kurashi.blogspot.com/2019/03/blog-post.html

でも、今ブログ記事を見直してみたら、この年に肥料をあげた結果どうなったのかは書いていなかったようです。結果としては、肥料をやってもあまり変わらなかったんです。むしろ肥料の副作用(虫害等)の方が大きかったかもしれない。

つまり、この記事ではタンカン不作の原因を肥料不足と推測していたのですが、今から考えてみると剪定不足だった可能性が高い。

というわけで、今年は幸か不幸か柑橘類の販売作業が少なかったので、できた時間で「強剪定」をしてみたのです。

「強剪定」ってどのくらい切るの? というと、厳密な定義はないと思いますが、柑橘類の場合は全葉っぱの量の20%以上を除去するのが「強剪定」であるというのが一般的のようです(なお弱剪定は5%以下)。

全葉っぱ量の20%というとかなり太い枝まで切る感じなので、今年はチェンソーで剪定しました。ちなみに弱剪定の時はノコギリどころか剪定ばさみすら使わないこともあったんですけどね(手で折り取るため)。

チェンソーが働いてくれたので剪定作業自体はそれほど大変ではなかったんですが、大変なのは剪定で切り取った枝の処理です。例年の数倍あったため、片付けるだけで4日以上かかっています(例年は1日で終わる)。

それにしても、剪定というのは植物にとっては自分の体を切り取られるわけですから、いいことがないように思えます。剪定は間違いなく植物にとってストレスですよね。ところが剪定されなかったらされなかったで、かえっていろいろな問題が起こります。例えば、枝が多くなりすぎて弱くなる、葉っぱが繁りすぎてかえって日光が当たらなくなる、枝がどんどん上へ上へと伸びていって実が付かないなどです。

古代人がいろいろな作物を栽培しはじめた時、最初にあった技術の一つが剪定であるといわれています。剪定とは、植物にとって余計な部分を取り除いてあげることで、植物を元気にする技術なんです。肥料や農薬を使わずに植物を元気にできるのが剪定。無農薬・無化学肥料の栽培では非常に重要な部分です。

この強剪定が効いて、今年はタンカン・しらぬいが豊作になるといいんですが…!

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2023年2月12日日曜日

【お客様の声】甘夏ぽい見た目とは裏腹にさわやかな甘さで、一番のお気に入りになりました。

「スイートスプリング」って聞いたことありますか?

あまり都会では出回っていないカンキツなので知らない人が多いかもしれません。

これは見た目は八朔ですが、八朔のような苦みはなく、つぶつぶ感(サクサク感)はなくてジューシー、糖度はあまり高くありませんが酸味も低くて爽やかな味がするカンキツです。

八朔同様、皮は固いので手では剥けません。 櫛形に切って食べるのがオススメです。

スイートスプリングの著しい特徴は、酸味が低くなる時期が他のカンキツに比べてとても早いこと。11月、まだ果実が青い時期に、酸味が低くなって食べ頃を迎えます。そのため、南さつま市の物産館では11月中旬頃から売られています。この時期は他のカンキツはないので、スイートスプリングの独擅場ですね!

(名前にスプリング=春が入っているのに、真冬になる前から売られるようになったのがネーミングって難しいなと思います。)

今、ネットで検索してみたら「栽培が難しく生産量が少ない」というような記述がありましたがこれは間違い。スイートスプリングはカンキツ類としては栽培は容易な方に属します。害虫の被害を受けにくく、病気に強いので無農薬栽培にも向いていると思います。

ただし、まだ生産量が少ないので栽培のノウハウは蓄積されていません。具体的には生産量を上げること、糖度を高めることの2点が、私としてもまだよくわかっていません。私は他のカンキツを基本的には無肥料で育てていますが、これに関しては少し肥料があった方がいいのではと考えています。しかし無肥料でも生育は旺盛だし…、よくわかりません。

なお11月から売っていますが、私はやはり完熟した方が美味しいんじゃないか、という考えから1月中旬に収穫しています。ただし、これも「青いうちの方が美味い」という人もいます。まだ収穫時期も確立していないですね。

今年は、「南薩の田舎暮らし」の主要カンキツであるポンカンが不作だったので、ポンカンの代わりにスイートスプリングをFacebook等で案内しました。すると「スイートスプリングは初めてだけど注文してみます!」という親切な方がたくさんいらっしゃいました。そして、とても気に入って下さった方がいるのでいただいたメッセージを紹介します。

スイートスプリングがとっても美味しくて、大好きです!(東京都 Hさん)
前回注文したスイートスプリング、初めて食しましたが甘夏ぽい見た目とは裏腹にさわやかな甘さで、一番のお気に入りになりました。美味しかったです。
珍しい品種の栽培&販売、有難うございました。(千葉県 Kさん)

気に入っていただけて私もホッと一安心でした。ちなみに、私自身はスイートスプリングは酸味が低いのが物足りなく思っています。私は酸っぱいカンキツが好きです(笑)もう少し酸っぱいともっと美味しくなるような気がするんですが。

あとほんの数箱だけですが在庫がまだありますので、よかったらお試し下さい。

【南薩の田舎暮らし】無農薬・無化学肥料のスイートスプリング
※4.5kg入り1,900円で、スイートスプリングとしてはかなり安いです。でもあまり安くしすぎたので今後値上げするかもしれません。

 

2023年2月7日火曜日

第5回そらまどアカデミア開催しました! 絵の具の性質から見る絵画の歴史

2月5日(日)、第5回そらまどアカデミアを開催いたしました。

内容に触れる前に、まずはこちらの駐車場の案内についての不手際を謝りたいと思います。店舗駐車場だけでは足りないので、近くの久保公民館の駐車場も使うようになっていたところではありますが、そちらの駐車場もいっぱいになり、駐車に手間取られたと思います。申し訳ありませんでした。

とはいえ、今後も駐車場の誘導の人員を手配することができないのでご迷惑をおかけすると思います。ご寛恕いただければと思います。

それから、プロジェクタを映すスクリーンが空調の風でユラユラ揺れてたのも良くなかったですね! 見づらいまではなかったですが、気になった方は多いかと。申し訳ありませんでした(しかしこれも空調がないと寒いし…悩ましいです)。

さて、今回のテーマは「絵の具の旅—中世ヨーロッパの絵の具の歴史とその作り方—」ということで、西洋の絵の具の歴史を「現代テンペラ画家」のきはらごうさんに語っていただきました。

「中世ヨーロッパの絵の具の歴史」というタイトルですが、講演は2万年前のラスコーの洞窟壁画から始まりました。旧石器時代の洞窟壁画では、顔料としては土が使われていました。では土をそのまま壁に塗ったのかというとそうではなく、水で溶いた土を口に含んで吹き付けたり、動物の血を混ぜたりして「絵の具」にしていました。唾液や血液といったタンパク質が固着材=糊剤(メディウム)の役割をしていたわけです。顔料+水+メディウムという絵の具の構造は、現在も2万年前も変わっていません

一気に時代が飛んで中世には、今回の講演の中心であるテンペラが現れます。テンペラとは卵をメディウムに使った絵の具の技法です。テンペラ技法が使われた有名な作品といえばボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』。

テンペラの作品は経年劣化が少なく、色が鮮やかに表現出来るという利点があります。また、卵の乳化作用によって水と油の両方を添加できる上に、固まると水にも油にも強いというのがテンペラの特徴。しかも固まる時に収縮しないので絵の具のひび割れがありません。確かに中世のテンペラ画は数百年経っているのにあまり傷んでいないですね。『ヴィーナスの誕生』も色鮮やかです。

しかしテンペラにはデメリットも大きかった。まず厚塗りが出来ないこと。そしてグラデーションやぼかしの技法がやりづらいこと。そして絵の具が保存できず、その都度ごとに自作する必要があるということです。そうしたデメリットを克服して開発されたのが油絵の具でした。

さらに16世紀には、木枠に布を張ってつくるキャンバスが登場。これは船の帆をつくる技術の副産物のようです。それまでは木の板や壁に描いていたのですが、こうして大きな作品をつくれるようになりました。そして油絵の具も、乾性油に揮発性油を混ぜ、顔料とともに練ることで粘度の調整ができるようになりました。これによって非常に細かい部分まで描くことが可能になります。レンブラントの『夜警』など細部まで描かれた大作は油絵ならでは。

産業革命が起こると、画家が自分で絵の具を調合していた時代は終わりを告げ、絵の具は「商品」になりました。このため野外に絵の具を持っていくことができるようになります。それまでは絵の具の調合道具などが必要で工房でないと絵を描くのは難しかったのですが、外で手軽に絵が描けるようになって、光の加減や空気の揺らぎといった一瞬の「印象」を絵画で表現しようというムーブメントが起こります(→印象派)。

そしてドイツのオットーによって1901年にアクリル樹脂が開発されると、これが絵の具のメディウムに活用され「アクリル絵の具」が誕生。いわゆる「ペンキ」ですね。1920年代には「メキシコ壁画運動」(メキシコのアイデンティティの確立のために民族主義的で大規模な壁画が盛んに制作された運動)が起こりますが、壁画は屋外であるため、耐久性のある画材が必要だったと言う事情もあり、アクリル絵の具が普及していきます。

なお、アクリル絵の具が芸術作品で使われた最初は、ピカソの『ゲルニカ』(1937)ではないかということです。『ゲルニカ』はご存じの通り横が8m近い超大作。ピカソは、納期(万博での展示)が迫っていたため、この超大作をたった1ヶ月で完成させるのです。反射の少ないマットな質感、大画面でも亀裂や剥離が起こらない、そして乾くのが早いといアクリル絵の具の特性から、ピカソは敢えてこの作品にアクリル絵の具を使ったのではないか、とのこと。確かに油絵の具だと乾くのに1週間くらいかかりますよね。ただし、『ゲルニカ』の絵の具を採取し分析することはできないため推測だそうです。

今までアクリル絵の具が優れた画材だとは思っていなかったのですが、講演を聞いて、テンペラ絵の具や油絵の具の短所を克服した、到達点的な絵の具なのだということがわかりました。そういわれてみれば、ペンキで大面積(大きな看板とかビルの壁面とか)を塗ることは比較的容易ですが、人類の歴史においてこんな大面積に彩色できるようになったのは現代になってからです。油絵の具で大面積に彩色するのは現実的に不可能でしょう。講演のおかげで、テンペラの面白さもさることながら、アクリル絵の具の優秀さに気付きました。

それから、これは講演後に個人的に質問してわかったことですが、なぜテンペラ作品には金箔が貼られたものが多いのか。

例えばこちらの『荘厳の聖母』(ジョット・ディ・ボンドーネ)。テンペラ技法で描かれた作品です。画面には金箔がふんだんに貼られております。

この金箔によって荘厳さや権威性を表しているわけですが、油絵時代には金箔があまり使われず、なぜこの時代に金箔が多用されるのだろう……と思っていました。

実はテンペラと金箔は相性がよく、逆に油絵と金箔は相性が悪いのだそうです。というのは、金箔の上に油絵の具を載せると剥離しやすく、また油絵の具は乾燥するときに収縮するため、上に貼った金箔にシワが出来る! 油絵の具の場合は、金箔の上でも下でも都合が悪いのです。

一方、テンペラは金箔の上にも描けるし、乾燥する時にも収縮しない。だから金箔が使えるんだとのことでした。なるほど! また、日本画も「膠(にかわ)テンペラ」でありテンペラ技法の一種であるため、日本画には金箔が使えるわけです。そうだったのかと膝を打ちました。

実際の講演は、2時間近いものでしたので内容盛りだくさんで、ここにまとめたのはごく一部です。私自身は絵を描いたりはしないのですが、自分でも絵を描く方にはもっと別の角度から興味深い点がいろいろあったと思います。

このような情報量の多い講演をしていただき、きはらさんにはこの場を借りて改めて感謝です。次回の「そらまどアカデミア」は未定ですが、また面白いものになるよう検討していきたいと思います。お楽しみに!