2023年5月18日木曜日

第6回そらまどアカデミア「竹の音に魅せられて」

第6回そらまどアカデミア開催します!

今回は室屋無吹さんに「竹の音に魅せられて」というタイトルで、尺八の演奏を交えつつ、尺八の歴史について語ってもらいます。

先日、今回講師をお願いする室屋さんの「無吹庵」に行ってきました。

これは月に一回やっている、「尺八と触れる場」みたいな催しです。

久しぶりに室屋さんの演奏(…もはや「演奏」と呼ぶべきなのか疑問)を聴きましたが、うーん、すごいとしか言いようがないです。

これは我々が知っている「音楽」ではなく、「音」。譬えるなら、カールハインツ・シュトックハウゼンの「コンタクテ」みたいな(←譬えが難解すぎますけど、なかなか適切な譬えができません)。

室屋さんは幼い頃からピアノをやっていたそうですが、楽譜通りに弾かなくてはならないコンクール主義に疑問を持っていたところ、高校生の頃に観た黒澤明の映画で邦楽の響きに魅せられて尺八を手に取ったそうです。

実は私も、黒澤明の「蜘蛛巣城」の笛の音に高校生の頃にやられたクチです。あのかすれたような、美しい音とは言えないのに妙に心を捉える笛の音は、「音楽」ではない「幽玄の世界」を垣間見せてくれましたよね…。

ちなみに室屋さんがやっていたのは、最初は「普通の尺八」でした。「普通の尺八」というのは、西洋の音階を奏でられるようにした現代楽器としての尺八です。しかし実は、本当の(伝統的な)尺八はそんなものではなかった!

美しい音階を奏でるのではなく、むしろ竹の息吹を鳴らすのが本来の尺八であり、調律をしていない(というか調律という概念の外にある)「地無し尺八」が本来の尺八だったのです。

だから写真のように、いろいろな大きさの尺八がありますが、「これ調律どうなってんだろ」とか思っちゃいけません。いろんな高さで音が鳴る、それが尺八です。室屋さんは5年前からこの「地無し尺八」を上村風穴氏に師事し、鹿児島では第一人者的な存在となっています。

そしてこれは、時代劇に出てくる虚無僧(こむそう)が吹いていた尺八なんです。虚無僧たちは尺八を楽器として吹いていたのではなく、「法器」として、修行として吹いていたのでした。尺八によって悟りの境地に至れる、というのが虚無僧たちの奉じていた教え(普化宗)でした。

私は、「尺八で悟れるなんて無茶な!」と思っていたのですが、室屋さんの尺八を聴いて考えが変わりました。少なくとも尺八によって法悦(=トランス)状態になるのは間違いなさそうです。トランスといっても、リズムによるトランスではなく、「音のゆらぎ」によるトランスです。

ところで、私が無吹庵にいる間、他のお客様もいたのですが、その中の一人がディジュリドゥというアボリジニの楽器を吹く方でした。ディジュリドゥとは、曲がったユーカリの木の内部がシロアリに喰われて空洞になったものを利用して作られる最古の楽器(の一つ)だそうです(写真参照)。

少し演奏してくださいましたが、これまたトランスに陥りそうな、不思議な音色でした。この楽器には音孔がなく、そもそも音程を奏でるものではありません。循環呼吸によって途切れずに音を鳴らしながら、「音のゆらぎ」を重ねていく感じです。これも法悦的ですねー。

こういう楽器を奏でる方が心惹かれるのが「地無し尺八」なんです! どういう存在なのか、少しは伝わるのではないでしょうか。 (少なくともシュトックハウゼンよりは(笑))

室屋さんの講演では、「古典本曲」と呼ばれる伝統的な尺八の曲も演奏してくださるそうです。我々が普段聴いている音楽とは別の「幽玄の音の世界」が垣間見えるものになるはずですので、どうぞお楽しみに。

 ★本講座は、2022年11月に予定し、講師都合で中止になったもののリベンジ企画です。

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第6回 そらまどアカデミア

竹の音に魅せられて

講 師:室屋無吹

「尺八」と聞いてパッと思い浮かぶのは虚無僧ではないでしょうか? 実は虚無僧が吹いていた尺八と、現代の尺八には大きな違いがあるのです。その両方を吹き比べながら、日本画から尺八の歴史を読み解いた泉武夫著『竹を吹く人々』を参考に、その変遷を辿ってみましょう。

日 時:2023年6月11日(日)14:00〜15:30(開場13:00)
場 所:books & cafe そらまど (駐車場あり)
料 金:1000円(ドリンクつき) ※中学生以下無料
定 員:15名
要申込申込フォームより、または店頭で直接お申し込みください。※中学生以下は無料ですが申込は必要です。
問合せこちらのフォームよりお願いします。

<講師紹介>
尺八の音に魅せられ20年。5年前より地無し尺八奏者の上村風穴氏に師事。現在、普化風韻会会員、虚無僧研究会会員。

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