5月31日に初開催された「ZINEフェス鹿児島」へ出店しました。
直営店「books & cafe そらまど」で製作している文芸誌『窻(まど)』の販売と広報が目的です。『窻』は、ちょうど第4号が出たばかり(正確には、6月1日が刊行日でしたので1日フライングでしたけど)。第4号は100ページを超え、たくさんのご寄稿をいただきましたが、それでも執筆者は直接の知り合いがメインなので、新しい出会いを求めての出店でした。
【参考】文芸誌『窻(まど)』
https://sites.google.com/view/soramado/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/%E6%96%87%E8%8A%B8%E8%AA%8C%E7%AA%BB
※第5号へ向け「見た目と中身」をテーマにしたエッセイを募集中です(〆切 2026年10月31日)
↓『窻』第4号はインターネットでも販売しています。
https://books-soramado.stores.jp/items/6a20ddd46e3db50045784403
いやー、それにしてもびっくりしましたね。会場の人の多さ!
出店者数にも驚きました。正直「鹿児島にZINEを作っている人がこんなにいるの!?」と半信半疑でした。県外から来られている方も3割程度いたと思いますが、メインは地元(宮崎南部含む)の方でした。
しかし開始時間前は、「出店者がこれだけいてもお客さんはガラガラだったりして…」と心配していました。入場料も300円取りますし。ところが、入り口には11時の開場直後からたくさんの人が列をなしました。私はその時間帯にちょうど受付をしていたのですが、開場後20分で100人以上の人が来たような気がします。鹿児島にもこんなにZINEに興味を持っている人がいるんですね。
というわけで、大盛り上がりだった初開催の「ZINEフェス鹿児島」。当日会場でゲットしたZINEの一部をご紹介します。なお作者の後のアカウント名の無印はInstagramです。
『手の中の殺人』(上下) 作者:唯野 @yuno.youknow_uno
今回手に取った中でダントツに面白く、そしてダントツに安かった作品(なんと上下合わせて200円!)。以前スマホにメモしていた推理小説(連続殺人)のアイデアをしばらくたってから発掘し、そのアイデアを作品にしていくという作者の苦闘が面白おかしく書かれています。下巻はその推理小説そのものがメインで、これも面白い。小説の主人公は女性ですが、「女言葉」を使っていないのもGood! メタフィクションながら、作者の個人的経験(怨念?)がフィクションに浸食していくバランスも面白い。ただし作者の方が「イベント直前の入稿になったので誤字が多いです!」と苦笑しながら言っていたように、誤字が多いのとクセのあるフォントを使っているのが惜しい。改訂版希望!
『友人と二人で行った! ハンガリー ブダペスト旅行記 in 2017』 作者:唯野 @yuno.youknow_uno
上と同じ作者の作品。これも素晴らしい。変に面白くしようとしないで、ありのままを書いているような感じなのがいいです。しかし読者を意識していないのではなく、ちゃんと第三者にわかりやすいように書かれています。そもそもこの方は文章がうまい。商業的な本の場合、読者が価値を感じるもの(すごく面白い、ためになる等)にしなくてはならないという力みがあると思うのですが、この作品はいい意味で力が抜けていて、なのに力作!
『テレビ番組 ダホンの極楽ラーメン天国ができるまで』 作者:ダホン @dahon.honda @dahon_honda[X]
今回のZINEフェスでは、イラスト系ではなく文章の作品を買おうと思っていましたが、この作品はパワーに圧倒されてつい購入。ラーメン好きの作者による、「自分がテレビのプロデューサーだったらこういうラーメン番組を作るんだけど」という妄想マンガ。マンガのクオリティが高い上に、登場人物の設定が妙に作り込まれていていかにも妄想が暴走している感じ(笑)。実在のラーメンが登場している(らしい)のに、店名が明かされないのは焦らしでしょうか。私は「ラーメン鷹」しか分かりませんでした。全然ダホン(=駄本)じゃないです(※ダホンは「本田」のアナグラムでたぶん「駄本」の意味ではないです)。
『&Amami, &me vol.1』 作者:佐々木愛美
奄美へ移住した著者が、移住者・二拠点生活者のインタビューを中心に奄美ライフを紹介する雑誌(という体のZINE)。インタビューされている人のうち一人(海野めぐみさん)は、おそらく著者自身。この作品は商業誌に劣らないクオリティー。うーん、隙がない!
『〈改訂!〉僕の職場自慢を聞いてくれ!』 『僕の自慢の職場話を聞いてくれ!』 作者:宗谷五百枝 @aunuki_sooya[X]
仕事が出来て個性的なキャラばかり、その上和気藹々としているという、「こんな職場で働きたい」と思わせる作者の職場を描いた作品。特に中心となっているのは同僚の面白話で、「名前とか変えてるだけで全部実話!」とのこと。「もし会場にこの職場の方が来たら、私は跡形もなく退散します」と作者。ただし、個人の特定を避けるという以上に、名前だけでなくあらゆる部分がぼかされています(例えば仕事内容)。内輪ネタはディテールがちゃんと書かれるほど面白いので、炎上覚悟でもっとリアルに書いて欲しかった(笑)! ただし、この作者自身は面白おかしい作品よりも、細かい人間観察や社会の機微の考察が向いている人かもしれないとも思いました。
『デッドストック 01』 作者:CHIAKI FUJITANI @fjtncak @fjtn_c[X]
商業出版でも活躍するフリーライター藤谷千明さんが、商業誌に使えなくてお蔵入りになっていたエッセイ3つをまとめた作品。この方は自分のことを書くのがうまい。ZINEは自分や周りの人が題材になることが多いですが、いわゆる「身バレ」の配慮や自己開示への不安からなのか個人的な情報がそぎ落とされて内容が抽象的になっているものがよくあります。でも結局面白いのはディテールの方。この作品は、(有り難くない)家族のこと、自衛隊で働いていたことなど、あまり人に教えたくないようなことを実にうまく書いています。だけど個人情報は書いていない。さすがプロ!
『63才母×39才娘 背中合わせでシャウトする』 作者:岡田薫子・畑中宇惟 @okadakaoko
母と娘によるエッセイ・往復書簡・映画レビューなどとまとめた作品(それぞれの作品が掲載されている)。 そもそも、どうして母娘でZINEを共作したのだろうと思いましたが、作中には製作の事情は書いてありませんでした。しかし母娘で共作しただけですごい。普通ないですよね。「シャウトする」とありますが、作中では別段シャウトしているわけではなく、人生のままならなさについて静かに語っています……と書いて見直したら、畑中さんがブルーノート東京について「ここはスノッブでいけすかねえ。(中略)トイレで高尚ぶるな!暗すぎておしっこの色が見えないだろ!」とシャウトしていました(笑)。
『働かれぬ昼のために』 作者:丘本千尋 @F3eRu @F3eRu[X]
新卒で初めて配置された部署が、高スキルを要する激務部署だった! その部署では新卒で何のスキルもない作者に仕事を教える余裕もなく、結果として作者は放置され、観葉植物に水をやる程度の仕事しかさせてもらえないという「社内ニート」になります。この暇すぎる仕事時間に考えたことが連ねられた作品。「私はもう自我が溢れちゃって溢れちゃって日々困っている」と作者自身がいうように、暇な時間、意識は常に自分そのものへ向かっています。なんだか痛々しくさえある。タイトルも内容も、ヒルティ『眠られぬ夜のために』のパロディだと思われます。
『大凡1850年のハナシ』 作者:清水 實 @minoru_43[X]
鹿児島に「B.B.13 BAR」というめっちゃオシャレなバーがありますが、作者がそこで出会った1850年製の「マデイラワイン」という特殊なワイン(なんと半永久的に保存可能なんだとか!)に触発されて、1850年あたりの世界についてまとめた8ページの作品。正直いえば、もう少し情報豊富だったらよかったなあと思う部分もありますが(作者は調べたことをすごくギュッとまとめている)、こういう短い作品が作れるのもZINEの良さなのかもしれません。
『ビストロ・ガールフレンズ』 作者:鳩村澪 @hatopoppomio @hatomuramio[X]
聞き慣れないコース料理を題材に、女性二人の食事を描いた連作短編集。この作品は内容もうまいですが、装幀、というか表紙にびっくり。タイトルもなにもなし! 即売会で売るのだと思えば、これでいいのか! ちなみに、この装幀は、高級なレストラン(や結婚披露宴会場)で席上に置かれるメニュー表を模していると思われます。 ZINEは自由ですね。
なお、上で紹介した作品は、「books & cafe そらまど」の店頭で販売します(「転売禁止」と書かれた作品はありませんでした)。ぜひ手に取ってみてください。
