2014年4月20日日曜日

南薩コンフィチュール「金柑とたんかん」のレシピを紹介

現在販売中の南薩コンフィチュール第2弾「金柑とたんかん」が好評です。

このジャムは、昨年自家用に作ったジャムがモトになっています。近隣の先輩農家からいただいた金柑とうちで作っているたんかんがちょうど家にあったので、家内がそれでジャムを作ったんです。それがとても美味しかったので、「これは是非商品化すべき!」と家内を説き伏せて、ようやく今年の販売に漕ぎ付けました。

このジャムは、金柑の皮とたんかんの果肉で作られているのですが、濃厚な甘みと軽やかな苦みがある金柑と、爽やかなたんかんの相性は抜群です。偶然家にあった材料で作ったわけですが、とてもバランスのよい組み合わせだと思います。金柑はともかく、たんかんは鹿児島以外ではあまり見かけない果物ですから、この2つが同時に家にあるという偶然はこの地域ならではですね。

有り難いことに、ご購入いただいた方からも「ちょっと高いけどオススメ!」「甘すぎず金柑の苦みがあって美味しい」「普通のマーマレードは苦手だけどこれは美味しかった」といった感想や口コミをもらっていて、事実ちょっとお値段高めですが売れ行きも好調です。

このジャム、製造はもちろん家内の手作りですが、美味しく仕上げるためにとても手間がかかるというので、先日加工所にお邪魔して(加工所内は家内の領域です)、レシピを取材してみました。少し説明が細かすぎるきらいもありますが、どうやって作るのかご紹介します!

まず材料。
金柑……………約1kg
たんかん………約1kg
グラニュー糖…約800g
レモン汁………レモン1/2個分
です。これだけです。

(1)下ごしらえ編

まずは金柑の下ごしらえから。金柑の皮にある小さな傷の部分を除去します。この金柑は、大浦で一番美味しい金柑を作ると評判の樋野さんの金柑を使っていますが、傷物を格安で分けてもらっていますので、ちょっとだけ傷があるんです。ぱっと見では気づかないくらいの小さな傷なのですが、これを残していると食感と見た目が悪くなるので全部丁寧に取り除きます。


次に金柑を切ります。ざくざく切ります。


切った金柑を、皮、種、それ以外の部分(果肉と薄皮)に分けます。この作業が面倒です。種は苦いので捨てますが、「果肉と薄皮」は重要です。ここにはジャムを固めるために重要な物質、ペクチンがたくさん含まれているからです。


金柑の「果肉と薄皮」をフードプロセッサにかけて粉砕します。


ジャムのメインの材料である皮もフードプロセッサにかけて粉砕します。ただ、あまり細かくしてしまうと皮の食感がなくなってしまうので、軽くかけるだけにします。


次はたんかんです。たんかんは当店で売っているものと同じ、自家農園で栽培している無農薬たんかんです。

まずたんかんの皮を包丁で螺旋状に剝いていきます。手で剝くと白い薄皮の部分が残ってしまうので、包丁でやります。ただ、皮の方に僅かですが果肉がのこってしまいますので、ここの果汁だけ手で搾ります。実は、たんかんは皮についている際(きわ)の所が美味しいので、本当に細かい作業ですが一つひとつ行います。


次に、たんかんの果肉だけを包丁で切り出して分離します。薄皮の部分を入れると苦くなってしまいますし、食感も悪くなりますので小袋から一つひとつ果肉を分離していきます。果汁を搾るというのも一案ですが、そうすると果肉が入らないので面倒ですがこういう作業をやっています。


果肉をジューサーミキサーにかけて液状にします。つぶ感が少しだけ残るように軽くかけます。


(2)ペクチン準備編
実は、ジャムは「糖、酸、ペクチン」という3つの物質がバランスよく混ざっていないと固まりません。柑橘類の果肉にはほとんどこのペクチンが含まれておらず、主に皮と小袋の薄皮(じょうのう膜)に含まれているんです。そこで、金柑からペクチンを抽出する作業を行います。


先ほど用意した金柑の「果肉と薄皮」を鍋で煮ます。ちなみに、銅製の鍋を使っています。銅鍋は、熱伝導率がよいのでジャムには最適なんですよ。「じっくりコトコト」というのが丁寧な感じがしますが、ジャムは強火で短時間で仕上げるのが美味しいと言われています(長時間煮込むと、ジャムの食感を左右する高分子が壊れてしまうからです)。そして、理屈はよくわかりませんが銅鍋で作るとジャムの色も鮮やかに仕上がります。ただ、銅鍋はもの凄く錆びやすいのでお手入れが大変です。


「果肉と薄皮」を煮ていると、だんだんとろみがついてきます。このとろみの正体がジャムを固める物質「ペクチン」です。


これをザルで濾して、ペクチンがたくさん含まれている液体部分だけを取り出します。濾さないで全部をジャムに入れてしまうと、食感が悪くなるだけでなく、金柑の味が強く出過ぎてしまい、たんかんとの味のバランスが悪くなります。


ヘラで押すようにして絞り出します。


これで、ペクチンが豊富に含まれた液体ができました。ちなみに、こんな面倒な作業をするくらいなら、売っているペクチンを添加した方が早いんじゃないかと個人的には思っていますが、家内には自然の材料だけで作りたいというこだわりがあるみたいです。


(3)鍋で仕上げる編

ようやく本番です。「フードプロセッサにかけた金柑の皮」と「ミキサーにかけたたんかん果肉」を鍋に混ぜ入れ火にかけます。


火を通しながら、ここまで除去しきれていなかった種がないか確認します。もしあればもちろんアミで取ります。当然ですがアクも取ります。


ぐつぐつしだしたら、金柑の果肉と薄皮部分で作ったペクチン豊富な液体を投入します。ちなみに、ここで使っている金柑は、傷がなければブランド金柑「春姫」として出荷されるはずだったものです。ですから、皮も甘くて柔らかく、生でも美味しいです。普通の金柑の甘煮は結構煮詰めると思うのですが、この美味しさを損なわないように手早く火を通します。


さらに砂糖を投入。砂糖は分量を一度に入れないで、何度かに分けて少しずついれます。というのは、糖度を一気に高くすると金柑の皮が固くなってしまうのだそうです。


金柑やたんかんに含まれている糖分は毎回少しずつ違うので、製品の糖度を一定にするために砂糖の分量を微調整しなくてはなりません。そこで、ある程度砂糖を投入したら、適宜ブリックス計(糖度計)で糖度を計りながら砂糖の量を調節します(ブリックス計は、含まれているいろいろな糖分をショ糖に換算して全体の糖度を計る機械です)。最終的には、糖度をだいたい50度くらいに調整します。ジャムの糖度は40〜65度くらいで、50度という糖度はジャムとしては普通くらいの甘さです。


また、レモン汁も入れます。レモン汁を入れるのは酸の補給のためです。もう一度書きますが、ジャムは「糖、酸、ペクチン」という3つの物質がバランスよく混ざっていないと固まりません。たんかんに含まれている酸だけだと足りないため、レモン汁で酸を足してやるんですね。


鮮やかな色に仕上がりました。できあがったジャムはガラス瓶に詰めます。でもこれで完成じゃありません。保存食品なので、殺菌が大事です。


使用するガラス瓶は、中性洗剤で洗った後に蒸し器を使って高温殺菌しておきます。


そして、ジャムを入れた後も、脱気(酸素が瓶の中に残っていると雑菌が増える要因になるため酸素を抜く)と殺菌(高温で雑菌を死滅させる)でそれぞれ15分ずつ蒸し器で蒸します。これは、理想的にはお湯につけてやる方がいいんですが、施設の関係上蒸し器でやります。お湯の方がいいのは、温度調節ができるからです。蒸し器だと水蒸気による殺菌なので100℃しかできませんから、ときどきガラス瓶が割れてしまいます。


ラベルを貼って完成です。ラベルはうちにあるレーザープリンタで作っています。本当は印刷所に頼みたいのですが、経費削減の関係から今はプリンタのお世話になっています。近いうちにちゃんとした印刷のものに変えていきたいですね。ちなみに、たった14個のジャムを製造するのに、3時間以上かかっていました。


今回取材してみて、「金柑とたんかん」のコンフィチュールはもの凄く手間がかかっていることが分かりました。作っている本人は、製造過程の一部を企業秘密にしておきたかったみたいですが、あまりにも手間がかかるので、仮に公開しても誰もこの通りに作る人はいないんじゃないかと言って全部書いてしまいました。

1つ500円以上するのでジャムとしては割高な商品ですが、工程が多く丁寧に作っているので値下げして売ってはいけないと再認識しました!

ご購入は「大浦ふるさと館」またはこちらから→南薩コンフィチュール「金柑とたんかん」

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