「すごく苦労しながらもなんとかやり遂げようとする」ことを、「這いつくばって進む」、なんていいますよね。
とはいいながら、実際に這いつくばって何かをやることなんてあまりないのではないかと思います。が、農業だとこれがしょっちゅうある。
この時期、私は一日中這いつくばって、柑橘の木の根元と格闘しています。
何をしているかというと、柑橘の根元に卵を産み付けてしまう害虫「ゴマダラカミキリ」の駆除をしているのです。成虫もやっつけますが、基本的には生み付けられた卵と孵化した幼虫を、ハリガネでほじくってやっつけています。
根元をチェックして、僅かな痕跡(木くずや浸み出した樹液)を頼りに数ミリの幼虫・卵をプチっとやる仕事です。
正直、こんな地味ーーーな仕事、まともな成人男性のやる仕事ではない、と言われたら返す言葉もありません。都会では生き馬の目を抜くような熾烈な競争が行われているというのに、害虫をプチプチつぶす仕事を一日中やっているなんて…。こんなことをしてるから日本の農業はダメなんだ! といわれるかもしれませんね。
しかしこの仕事は、柑橘栽培の中でも一二を争うような重要な仕事です。他の農家の方は基本的には農薬で防除されている方がほとんどだと思いますが、それにしても重要な仕事です。
ゴマダラカミキリを放置すると、柑橘の木は枯れてしまうからです。割と簡単に。
50〜60年前、大浦町でポンカン栽培を一生懸命振興していた頃には、このゴマダラカミキリの頭を役場に持っていくと1匹につき10円くれたそうで、子どもたちの小遣い稼ぎになっていたと聞きます。こういうのでも「猛者」というべき子どもがいて、マッチ箱にゴマダラカミキリの頭をギッシリ詰めて、軽く100匹くらい集めていたとか。100匹で1000円です。当時の1000円、子どもにとってはかなりの大金ですよね。当時は1000円で「岩波文庫」が6〜7冊買えたんじゃないでしょうか。
ともかく、子どもにこうして駆除させたくらい、致命的な害虫なんですよ。
他の柑橘産地ではどうやって駆除しているのでしょうね。まさか一日中這いつくばってプチプチやるような原始的なやり方をしているのはごく少数派でしょうが、みなさん苦労はしていると思います。いくらやっても、なかなか完全に駆除するのは難しい害虫なんですよね…。
というわけで、しばらくは一日中這いつくばるのが続きます。
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