2016年12月9日金曜日

石蔵古本市オープン!

遂に始まりました「石蔵古本市」!

天候にも恵まれ、本日12月9日13時よりスタートしました。

石蔵に並んだ古本。

いやー、想像以上にぴったりきてますね! 「ザ・古本屋」ですね。

先日マルヤガーデンズにて「古書目利き市」という古本市が開催されてたんですが、それより雰囲気は抜群にいいと感じました。使い古された石蔵と、古本がぴったり呼応している感じです。

本の内容も、思った以上にガッツリしています。古本屋さんのみなさんが、南さつまの人の知的水準の高さを信じて選書したということが伝わってきました。鹿児島の田舎で、この筋の本が揃うなんてすごいですよ!

舞台は整いました。あとは、千客万来となれば言うことなしです!

というわけで、私の気になった本を中心に、会場の紹介をしてみたいと思います。

まずは地元郷土誌コーナー(古書リゼット)。郷土誌関係は、図書館に行けば見られるのは分かってはいても、やっぱり手元に置いておきたいものですよね。「笠沙町郷土誌」なんかは今でも販売していますが(確か)他はもう売っていなかったと思いますので、私もこういう機会を捉えて徐々に揃えていきたいです。

郷土誌といえば、鹿児島の民俗学者である下野敏見さんの『東シナ海文化圏の民俗』がありました(あづさ書店)。下野さんは南方新社から出ている『南九州の民俗文化誌』など鹿児島で各種の民俗学叢書をまとめている方です。その下野さんが、さらに視点を広げて東シナ海の中に南九州の民俗文化を位置づけて考察したもので、かなり興味をそそられました。

一方、こちらは地元とは全く関係のない道元研究のシリーズ(特価書店)。このシリーズは知りませんでした。私は『正法眼蔵』という道元の難解な本をちょっとずつ読んでいるんですが(正直あまり理解はしてませんけど)、道元という文字に反応してしまいました。こういう、日常生活を送っているだけでは全く縁のないような世界にバッタリ出会ってしまうのが古本屋の醍醐味です。

この道元シリーズを置いていた特価書店さんは、地元加世田からの参加なのですが、戦記ものを得意としているんだそうです。すごいコレクションです!

このシリーズ「戦争を知らない世代に」は、県ごとにまとめられた戦争の記録のようです。国際情勢がキナ臭さを増している今こそ読まれる価値があるのかもしれません。戦記ものというと暗鬱な気持ちになる本が多く、私自身が好んで読みたくなるものではないんですが、どうして日本は狂った選択をしていったのか、それを知ることは決して無駄ではないと思います。

特価書店からもう一冊。廃線歩きの第一人者、宮脇俊三さんの『七つの廃線跡』。この本では、なんと地元の南薩鉄道(の廃線跡)が取り上げられています。表紙も、吹上の永吉にある南鉄の橋脚跡の写真ですね。地元民的にはぜひ手にとってもらいたい一冊です!

うって変わって、こちらは竹下夢二(古書リゼット)。相場の半額で売っているそうです。なんで半額にしているのかは聞くの忘れましたが、趣味っぽい感じがしました(笑)。

古書リゼットさんに、こんな趣味があったんですね。かなり高価なものも出品していました。「石蔵だから飾りたくなった」ということで、鹿児島市のお店でも出品していないこういう貴重なものを大放出してくれています!

古書リゼットさんには、なぜか幼女関係の資料(古い雑誌のコピーなど)もたくさんあって、その中で一番気になったのがこの「幼女すごろく」。なんか今の時代だとヤバい感じですよね。でも内容は変なものではないです。でも「幼女すごろく」っていうタイトルの強烈さで印象に残りました。

こちらは、泡沫(うたかた)さんから松岡正剛著『知の編集工学』。松岡正剛さんは、読書界では知らぬ者のない読書の達人、いや「読書の仙人」です。2006年に、千冊の本を独自の視点から案内した「松岡正剛 千夜千冊」という超弩級の読書案内を刊行したのですが、これは読書界における一種の「事件」とまで呼べるものだったと思います(10万円もするのに結構売れたらしいです)。

その松岡正剛さんが提唱するのが「編集工学」という概念で、これは要するに知的生産の技法です。千冊の本を案内する荒技が、どのような技法により支えられているのか、その秘密の一端がわかるかもしれませんよ。


ところで超弩級の「知」の巨人といえば、なんといっても南方熊楠ですね! つばめ文庫には「南方熊楠全集」がバラで販売されておりました。大型本の「南方熊楠選集」はよく見るんですが、この小型の「全集」はあまり見ない品です(まあ、内容は相当被ってるんですけどね……)。ちなみに、この中では『十二支考』がオススメです。これは、十二支の動物それぞれを民俗学的に考察したもので、内容は至極真面目で学術的なものなんですが、書き方にユーモアがあって、唐突にダジャレが飛び出したり油断ならない本です。ちょっと読むのに骨が折れますが慣れると意外とすらすらいけます。

「つばめ文庫」からもう一冊、『西蔵旅行記』(西蔵=チベットと読みます)。これは明治時代の黄檗宗の僧侶である河口慧海が、仏典の原典を勉強するためにチベットに密入国して大学に入り、法王に認められて医者になったりして目的を達し、また日本へ帰ってくるという探検旅行記。と書くとつまらなそうに感じるかもしれませんが、途中強盗に身ぐるみ剥がされたり、迷ったり、死にかけたりというハラハラドキドキの展開で、古い本ですが全く退屈しません。チベットに興味があろうがなかろうが、エンターテインメントとして読める第一級の旅行記です。

「つばめ文庫」さんは、「本で旅する」をテーマに掲げていて、旅行記が充実しています。旅行記というと昔すごく流行った時代があって、アムンセンとスコットの南極点到達競争の話とか、スウェン・ヘディンがさまよえる湖を求めてシルクロードを旅する話とか一世を風靡したものですし、日本でもNHK特集「シルクロード」は大流行しましたね。でも最近では、探索すべきところは大概探索し尽くしてしまった(ような感じがする)ので、そういう「未知なる世界への憧れ」が持ちにくい時代かもしれません。 でもまだまだ世界が人跡未踏の地で溢れていた頃の古い旅行記を読むと、違った目で世界を見られるような気がします。

またまた気分を変えて、こちらは書道の本です(あづさ書店)。古本屋の伝統的実用書が書道のお手本なんですが、書道の本が並んでいるといかにも古本屋的な感じがします。「書道」「山岳」「釣り」は、新刊書店ではさほどの分量がないのに、なぜか古本屋では大々的においているジャンルですよね。

あづさ書店さんには、外にも本を並べて頂きました。外に本が並んでいると、これまた古本屋という感じです。外に並べた本は、古本屋にとってのショーウィンドーですね!

その外の本に「Nostalgi Hero」という雑誌を見つけました。どうやらいわゆる「オールドカー」の雑誌のようです。「オールドカー大作戦」というイベントを定期的にしている「南さつま旧車会」のみなさんに来て頂きたいと思いました。

外には絵本もたくさんありました(中では古書リゼットさんが絵本を揃えていました)。その中で目についたのが『さっちゃんのまほうのて』。これ、涙なしには読めない絵本です。いやほんと。途中で泣いちゃうので読み聞かせとかできない本です。思い出すだけで目頭が熱くなります。私からはとても紹介できないので、ぜひ現物を手にとってご覧ください。

最後に。泡沫(うたかた)さんでは、なぜか顕微鏡が売ってました。謎です。こういう謎の商品があるのが、また古本屋の面白いところです。

というわけで、今度の土日はぜひ万世の丁子屋石蔵で古本屋のめくるめく世界に浸って下さい!

【情報】
「石蔵古本市—万世*丁子屋石蔵」
日時:12月9日(金)-12日(月)10:00-17:00(初日13:00〜、最終日〜15:00)
場所 :南さつま市加世田万世 丁子屋石蔵
参加古書店:あづさ書店 西駅店泡沫(うたかた)古書リゼット(レトロフト内)特価書店つばめ文庫
協力:南さつま市立図書館(12月11日(日)11:00より、会場にて除籍本の無料配布を開催) 
主催:南薩の田舎暮らし
Facebookイベントページでも順次案内を差し上げる予定です。

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