藪から棒な話なんですが……、数年前、「家」をタダでもらいました。
親はもちろん、親戚からでもありません。それまで全然知らなかった人からです。
知らない人から家をタダでもらう!? ウソー!!
というのが普通の感覚だと思います。ありえないですよね(笑)
でも本当なんです。事の発端は、耕作放棄地になっていた畑(というか藪)を借りようとしたことでした。持ち主(当然こちらにいない。大阪在住)とはなんとか連絡が取れたのですが、いろいろあって、「親類縁者、だーれも大浦にいないから、畑も家も、全部君がもらってくれ」という話になりました。
ただ畑を借りたかっただけの話なのに、家をもらうなんて……(動顚)。
「家をタダでもらえるなんてラッキーじゃん!」と都会の方は思うかもしれませんが、この家で育った持ち主ですらいらないと思う家ですからね。最近よく言われる「負動産」(不動産のもじり)というやつで、管理の手間や取り壊しにかかる費用などを考えると損するわけです。
ちなみに、もらった家の第一印象は、「森に包まれてる」(笑)
家自体は道路に面しているんですが、敷地内に大きな樹がたくさん生えていて、まるで森の中に建っている家のようです。
その森の向こうに、家庭菜園のような広さの畑もついています(ただし、今は雑木が生えている)。森の向こうに家庭菜園があるっていうのが面白い。
あと、屋根や外壁が水色に塗装されていて、この色合いが個性的でステキです。それはそうなんですが、だからといって自分で住むわけでもない家をもらってどうしよう??
そんなわけで、私も3年ほど放置していました。
しかし、家内から「あの家はどうするの?」「なんとかしないと」とせっつかれ、二人で中の整理を徐々にはじめました。中は、まだ家財道具がまだワンサカ入っていたし、しかも隙間から野生動物が入り、押し入れに巣を作っていました。当然、家の中は糞があちこちに。まさにカオス…。その当時があまりにカオスすぎて写真を撮っていなかったのですが、今思えばあの時の家の様子をちゃんと記録しておけばよかったですねー。
そして1年以上かけて、今日、ようやく家の中をスッキリさせることができました!
整理をする前は、空き家バンクに登録して誰かに貸すか、移住者を募ろうかと思っていました。
でも間取り的に家族には狭いし、何より普通の暮らしを送るには大改修が必要になってきそうです。もっと状態のいい空き家が周りにはたくさんあるのに、わざわざお金をかけてこの家に住みたい人がいるだろうか? これを人に貸すのはどうかなぁー、という気持ちになってきたわけです。
そしてこの家の間取りや広さを見てみると、小規模店舗をするのにちょうどいいサイズなんです。そして、最初はあまりにカオスすぎてとても使えないと思っていたのですが、だんだん整理が進んでみると、意外と痛みも少なくて(あくまでも「意外と」!)、古い家っぽいジメっとした感じもありません。
いっそ、自分たちで使った方が面白いんじゃない? だんだんそんな気持ちになってきました。
ここ3年くらい月イチでやっているイベント「石蔵ブックカフェ」、これの発展型として、この家を「古民家ブックカフェ」に改修したら……!
まあ、「古民家」っていっても、中途半端な古民家で、黒光りする立派な梁があるわけでもなく、良くも悪くもほのかに昭和の「高度経済成長」を感じさせるつくりです。
例えば、このタイルの流しなんかも、なかなかいいですよね〜!
「高度経済成長」というと、都会でのそれは「文化住宅」(簡単に言うと和洋折衷アパートです)とかをイメージすると思いますが、田舎での「高度経済成長」はちょっと違います。
例えば、このカマドとか。
「高度経済成長より前だよね(笑)」と思うかも知れませんけど、実はこういう形のカマドが普及したのも田舎ではけっこう最近の話で、それまでのカマドはまさに土でつくった効率の悪い(特に煙がひどい)ものでした。
「生活改善運動」といって、それまでの遅れた農村の暮らしを近代化させようという運動が戦前から戦後にかけて行われるのですが、その成果がこのカマドであり、さきほどのタイル張りの流しです。
こうしたものは今から見ると随分古いもののように感じますが、実はせいぜい60〜70年前に普及したものなんですよ。
すみません。つい歴史を語って話が逸れてしまいました(笑)
要するに、 まあ、なかなか味のある家で、ただ汚いだけの家ではない。このまま壊しちゃうのはもったいない。
であれば、「南薩の田舎暮らし」がずっとイベント的にやってきた「カフェ」を主軸にして、本を並べた「ブックカフェ」にしたら面白い!
…ような気がするんですが、大浦という土地を知っている方は分かる通り、そんなに簡単にお客さんが来るような場所ではないですし、我々も既に農業や食品加工に忙しく、ちゃんとできるのか大変心許ない。もちろん改修費用もかなりかかる。
そんなわけで、この半年くらい、改修してブックカフェにすべきなのか、そんなことはしない方がいいのか、夫婦二人で悩んできました…。というか、今でもまだ悩んでいます。
でも、不要品の処分や、家の掃除もかなり進んで、なんとなくイメージも湧くようになってきたので、一応、工務店さんに改修の見積もりを出してもらったり、頴娃に行って「頴娃おこそ会」がやっている空き家再生案件を見させていただいたりしてみました。
そんなこんなで、まだ「よし、やるぞ!!」って感じではないのですが、なんとなく動きだした……雰囲気。
こういう状態なんですが、古民家ブックカフェのオープンに向けて、関わってみたいかもーっていう人がいれば、ありがたいなあって思っています。どうしても、夫婦二人だけだと力不足な部分があるので、何人かでワイワイやりながらだったら、進むかも…?(笑)
あ、もちろん、「そんな物件があるんなら私が店をやります。貸して下さい!」という方がいたら大歓迎です。年間3万円で貸します。そっちの方が手間が省ける(笑)
しかし、近所の「下村広海商店(通称:馬場店)」も閉店し、「中村商店(通称:木戸店)」も閉店。今年は町唯一の病院「吉見医院」も廃業しました。大浦町の空洞化はどんどん進んでいます。今住んでいる人がなんとかしないと、なくなってしまうかもしれない町に私たちはいる。
誰か、一緒にやりたい人いませんか?
※もし「やりたい」って人がいたら、コメント欄、お店の問合せフォームにてご連絡ください。